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□その執事、変化
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退屈程嫌いなものはありませんよ?
ええ、坊ちゃんと出会ってからは色々と面白い事も多いので飽きません

…ですが、少々







「セバスチャンさぁあん!!」


ドッカーン!

「ゲホォ!ちと火力が強すぎたか」



「うわーん!散布機壊れてたんだった!!」




あの使用人達はどうにかならないのでしょうか、いい加減いくら私でも疲労というものを感じますよ。
ああ、彼女だけが唯一の癒しだというのに片付けをしなければ会えない
ここでもういっそ放っておいて会いに行ってもいいのですが、そうなるとこの役立たず共の惨事が悪化し後々の片付けが増えるだけ…

ハッとし懐中時計を見ればもアフタヌーンティーの時間が迫っている





遠い目をしつつも外の喧騒など聞こえないフリで茶葉の用意をする…。
そんな彼の軽い現実逃避も、近づいてくる足音に長らく続く事はない。
壊れるのではないかという勢いでドアを開け三人の人間が部屋に飛び込んでくる。
約一名は何やら泡だらけのメイドで、もう一人は黒焦げのシェフ…そして幼児のように見苦しい顔で泣く庭師
何があったのか聞かなくても分ってしまう、いや…分ってしまう以前に前々から同じミスを繰り返す彼等に問題がありすぎる。

準備をする手を止める事もなく、人選は確かに間違ってはいなかったと思う。
ただ一般的業務をこなすことが不可能だっただけで、決してこれは自分の落ち度ではなかった筈だ。
選ぶ基準がそこではなかったからで…





「はぁ…まあ大体何があったのかは理解出来ました」




「ずびばぜんですだぁああ!!」



「おう流石だなセバスチャン!とりあえず厨房は暫く使いもんにならねぇー」



「枝を切りそろえたら葉が全部なくなっちゃって…あ!!」




反省する前に同じミスをしないように努力というものをしないのでしょうか。
バルドに至っては全く反省の色はありませんね!?

苛々しつつも三人の話を右から左に受け流していると、フィニが声を上げごそごそとポケットから何かを取り出す。




「セバスチャンさん、これ庭に何でか落ちてたんですよー」




よく貴方が握って壊れませんでしたね…


手を止め、フィニの持っているものを覗き込む。
多少容器にヒビこそ入っているものの、至って普通の小瓶だ。
そもそも何故庭にあったのかがひっかかる
何かあれば自分が気付かぬはずがないし、フィニ自身も分るだろう。
誰かが意図的にではないとしたら誰かの落し物?

ここ最近シエルが孤児院の子達を招き入れていたのだから、有り得ないことではない。




「…一応何なのか調べますので私が預かっておきます」



小瓶の中では綺麗な血のような赤い液体が揺れていた
メイリンとバルドもその小瓶に多少興味があるのか、じっと見つめている。
だが忘れてはいけない

今現在予定の時間がギリギリ尚且つきっと荒れているだろう屋敷の片付けが…
きっと此処で彼等に任せていけば更に無残な事になるのは目に見えて分る。




「セバスチャン殿ー!」



神など実際はどうでもいいのだが、まさに神の救いのようなと言える声が聞こえてくる…
バタバタと部屋に入ってきたのは街屋敷にいるはずのアグニだった。
どうやらシエルに会いたいとソーマがまた我侭でも言ったのだろう
だがこの時ばかりはその我侭に感謝をするべきだろうか




「な、何やら酷い事になっているようなのですが」



「ああ、アグニさん丁度良かった。申し訳ないのですがこれから坊ちゃんにアフタヌーンティーをお持ちしなければならないので…」




「ああ、片付けのお手伝いくらい私にさせてください」




言わなくても理解してもらえるのはどれほど助かる事か…
とりあえず片付けの方はアグニが三人を上手く手伝わせてやってくれるのだろう
問題はとりあえず片付いた、あとは時間までに持っていくだけ…



ああ、本当

あなた方はアグニさんの爪の垢でも煎じて飲めばいいと思います











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