MAIN

□籠の鳥なんて興味はない
1ページ/5ページ





「申し訳ありません、もう一度言っていただけますか?」


「なんだ、珍しい…お前が二度聞きするなんて槍でも降るのか?」


「…」


人の悪い笑みを浮かべて、嫌味を吐く。
普段自分がしている事だが、こうされてみると確かに腹が立つものだと納得する。
別に聞き取れなかった、なんて事はない
言われた内容が信じたくないもので、尚且つ聞き間違いであって欲しいと思っての言葉だった。



「いつもお前は僕が一人じゃ何も出来ないみたいに言っているからな、お前に頼る事をせず調べ上げたんだ」


「…はあ」


「で、僕の仕事は此処までだ…後はお前にやってもらおうと思ってな」



渡された書類には、何度見てもあの名前が見える。
普通であればなんて事はないが、この主人の目を見ればただでは済まないのは分かりきっている。


「坊ちゃん、それは」


「勿論、お前用だ」


「…特注されたんですか?ありがとうございます、嬉しくて涙が出そうです」


手渡されたのは女物のドレス
シエルは今回の女王陛下の依頼を、犯人特定まで全て一人でやってのけた。
その後の作業は駒であるセバスチャンにやらせて何が悪いと言った所だろう。

セバスチャンからしてみれば、駒として扱われようが構わない…が
女性物のドレス、つまり女装をしろと言われるとまた心情も違ってくるというものだ。

胸の辺りにフリルがあしらわれており、これで胸の膨らみがなくても違和感はないだろう…。
まだ落ち着いた蒼い色で良かったと思う
これでピンクや赤だったら正直片方は死神も思い出すし、気分が悪くなる所だった。




「…では早速「僕も行くからな」…そうですか」



こんな面白いもの滅多に見れないだろう?

出来ればさっさと一人で終わらせてしまえたら…とは思っていたが、そんな事を許す相手ではなかった。



「私の連れとしては坊ちゃんでは些か小さいのではありませんか?」


「…別に正面から行くなんて誰も言っていないだろう」


とりあえずこのドレスを晒す事には変わりない
わざとらしく溜息を吐いて、さっさと部屋を後にする。
数日中には準備は整ってしまうので、暫くは気分が滅入りそうだ。


ドルイット子爵
またなにをやっているんだと呆れるが、彼が手に入れたアンティーク絡みらしく
本人自体には今回は悪意はないだろう。
犯人はまた別の者で、今回はそのアンティークに隠された証拠を手に入れるという事らしい。



「あの時の事根に持っているんですね…」


コルセットで内臓が出た例だってないし、現に出なかったではないか。
女装といっても別に違和感もなく着こなしていた…
まあそこに至るまでの所謂、【お勉強】が余計に忘れられなくもしているかもしれない
だがそれくらいしなければレディとしてなんて、全く振舞えないのだから仕方がないのに…

確かにいざ自分の身にふりかかってみると、嫌で仕方がない
だが全て完璧にこなせてこそ、ファントムハイヴ家の執事というもの。

女装の一つや二つ、大した事ではありません!



















「…何故少しもあまりがないんでしょう」


ドレスを着てみて、ぴったりと身体に合うことに驚いた。
自分の身体のサイズなど自分でも知らないと言うのに…
思わず身震いする、決して寒いからではない。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ