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□すきすき、だいすき
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バタバタと走る姿は、彼を知っている者なら目を丸くし見間違いと思うだろう。
彼は自分の足で走るスポーツだって嫌いで、好き好んで今の状況にいる訳がない。

だが紛れもなく彼はこの家の当主の一人息子


バーン!と壊れるのではという勢いでドアを開け、中に入る



「お父様!!」


「おや、元気がいいねシエル」


「坊ちゃん!?」


ベッドの上では父であるヴィンセントと、執事のセバスチャンが…
その光景にやっぱりか…と思うが、いい加減セバスチャンに学習しろと言いたくなる。
ヴィンセントを起しに来たセバスチャンがベッドにそのまま連れ込まれるのは日常だった。
お陰で起されなくてもシエルは自力で起き、父の部屋に乗り込むのだ。



「全くいつまでベッドに乗っているんだ、仕事はどうした」


「あ…申し訳御座いません」


「気にする事はないよセバスチャン、私が離さなかっただけなんだし」


下りようとするセバスチャンの腰に腕を回し、ニッコリ笑い掛ける
身動きの出来なくなったセバスチャンは眉を情けなく下げ、シエルに視線を向けてくる。



「お父様、仕事もあるんですからそろそろ離してやってください」


「そうだね、抱き心地がいいからつい」


パッと手を離しゆっくりと身を起す
やっと離れた手に、セバスチャンもベッドを降りた。
シエルが不機嫌そうに見上げてくるのに気付き、苦笑する。


「おはようございます、坊ちゃん」


「ん」


挨拶と共に、頬に柔らかいキスを送る。
これはシエルがセバスチャンに朝は絶対これを欠かすなと言っている事で、優秀な執事は言われてから毎日してくれる。
いつも父にばかりいい所を取られているが、これをされやっと落ち着くことが出来る。



「セバスチャン、私には?」


「え!?旦那様…ッんむ」


「ッお父様!!」


ぐいっと腕を引かれそのまま後ろに倒れると、ベッドに腰掛けていたヴィンセントの膝の上に乗る形になった。
顎に手を掛けられ唇を塞がれた
混乱する頭でどうなっているのか考え、漸くキスをされているのだと気付く。


「ごちそうさま」


「はっ…な、何なんですか…坊ちゃん?」


漸く離され上がった息を整えていると、目の前に立ったままのシエルが震えている。
もしは寝巻きのままでいたから身体が冷えて…?
これでは風邪をひいてしまう



「坊ちゃん、部屋に「いつもいつもお父様ばかりズルイです!!!」ぼっちゃ…ん、んっ―!?」


「おやおや」


急に顔を上げたかと思うと、正直痛いくらいに両頬を掴まれた。
なにを…と問う前に今度はシエルにキスをされた
膝の上で抱えたままのセバスチャンと、息子のシエルのキスにただ笑って見ているだけ…
それが余計にシエルの怒りに触れたのか、更に深くキスをする。



「んー」


見ていて二人は綺麗だしいいけれど、自分が暇だ。
後ろから耳にカプっと甘噛みすればビクっと反応する
…いいかも
























すっかり陽も昇り、昼時になってレイチェルは目が覚めた。
前日体調を崩していたのもあり、誰も無理には起さなかったようだ
姿を見掛けない夫と息子、そしてテキパキと仕事をこなす執事を探しながら直感で夫であるヴィンセントの部屋に入れば…


ベッドの上で三人仲よくお昼寝中だった。
セバスチャンの服が多少乱れて、目元が赤くなっている事を覗けば実に微笑ましい光景だ。
レイチェルはそれを気にした様子もなく、近づいてまじまじと眺める。


「やだ、可愛いじゃない」


起すのが勿体無いが、ヴィンセントとセバスチャンには仕事がある。

やはりここは一番いい反応を返してくれる執事を起こすべきだろう…










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