本殿の書庫
□試合開始2時間前
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次郎は次々に彩華からもらったクッキーを口の
中に放り込んでいた
「いやー、おいしいなぁ。このクッキー」
哲也は吹き出しそうになった。数日前に釣りに
行ったときのこと、次郎が・・・
「俺、好きな人ができたんだ」
「へえ〜、それで誰なの?」
「・・・俺らと同じクラスの・・その・・・・
篠原彩華さん」
「まあ・・・かわいいよな。目がクリッとしてるし、顔も整ってるし。ま、がんばれ」
こんな会話をしたのだった
今、次郎を見ているとそれがもう全面に出てい
る。幸い、篠原はそれに気づいてないが
「哲也君は食べないの?」
「ああ、うん。俺は元々菓子はあんまり食わな
いからさ」
「お前、彩華さんが作ってくれたんだぞ!ちゃ
んと食え!」
そういって俺にクッキーを一つ半ば強引に手渡した
渡されたからには選択権が食うしかない。仕方
なく哲也はそのクッキーを口に運んだ
そのとき何か視線を感じた。じっと見つめるよ
うな視線を・・・
「うん・・・うまい、これおいしいな」
「ホントに!?ありがとー!」
「な?だから言ったろ?うまいって」
「・・・なんでお前が威張ってんだよ」
そんな他愛もない会話ずっと続いた・・・
・ ・ ・
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妙に静かだと思い、ふと周りを見てみるとクラ
スメイト全員が深い眠りについてた
隣に座ってる次郎はいびきをかいてる。その向
こう側の篠原も通路側に上半身を出すようにし
て眠っている。おい、どうした?お楽しみはこ
れからだろ?俺が嫌いなバスレクとかいう幼稚
な遊びは?カラオケは?
そして問題だったのは哲也自身も激しい睡魔に
襲われていたことだった。
なんだ、この眠気は、
窓を開けようとする
開かない
ロックがかかっている様だ
バスのドアが開く音がした
軍服を着た男たちが入って来た
いったい・・・なにが・・・
そこで哲也の意識は途切れた
時計は4時ぴったりを指していた