本殿の書庫

□試合開始3時間前
1ページ/1ページ

車のライトに照らされた木々たちが闇の中に
不気味に浮かび上がっては後ろに退いていく。映画でもよくありそうな場面だ。確かこ
の前見た映画では森の中から突然化け物が飛
び出してくる・・・いわゆる「お決まり」の
パターンの映画だった・・・

そんなことを考えながら山本哲也(月が丘高
等学校2−B組名簿番号35番)はぼうっと右
側の窓の外を眺めてた。隣では哲也の幼馴染
の石田次郎(名簿番号2番)がなにやらゴソゴ
ソとリュックの中を探っている。
今このバスは月が丘高等学校2年生の目玉行
事、長野で行う野外キャンプのキャンプ場へと向かっている。全学級2ーA〜Eまでの総勢210名を乗せたバスが一列になって山道をくねくねと上っているとこだ。
手首の腕時計はちょうど午後3時を回ったと
ころだった・・・

「哲也〜、なんかお菓子持ってない?俺忘れちゃった」
「俺も菓子なんて持ってねえよ。つか俺普段から菓子食わんし」
「え〜、クソっ。ちゃんと荷物点検しとくんだった」
「お前もしかしたら他に忘れ物してんじゃねえか?」
「あ、してるかも・・・パンツ忘れてたらど
うしよう・・・」
そう言うなり次郎はバックの中を必死で探り
始めた
「ったく・・・」ふと哲也は視線を感じた。
視線を動かしてみると通路を挟んで反対側の座席に座っている篠原彩華(シノハラアヤカ
、名簿番号12番)がこちらを見ていた。いや
、見つめていたのかもしれない。そんな気が
した。気のせいかもしれないけど

「・・・何?」
「え!?あ、ううん!なんでもないの。ただ
次郎君がお菓子欲しいって言ってたから・・・これあげよっかなー・・と思って・
・・」
そう言う彩華の手にかわいらしい透明の袋に
包まれたクッキーがあった
「これ・・・食べていいの?」
「うん。妹にせがまれて作ったらたくさん作
っちゃって・・・。おいしいかどうか分から
ないけど、良かったら食べて」
すると突然次郎が・・・
「ホントに!?食べていいの!?うれしいな
ぁ、彩華さんが作ったんだからうまいに決ま
ってる」
そう言ってひょいとクッキーの袋をとって食
べ始めた
「うん!!うまい!すごいうまいよ、これ!」
「ホントに?ありがとう」
彩華がニコッと次郎に笑いかけた
時計は3時20分を指していた・・・

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ