夢を、見た。
僕みたいな誰かと、半田みたいな誰かが、一緒に手を繋いで歩いている夢。
ふわふわとしていて暖かくて優しい夢だった。
幸せな気分になる夢だった。
二人はゆっくりどこかを歩いて、そしてお互いに見つめ合って愛を語らう。
いつの間にか夜になって二人は星になって空を飛んでいくー。

「っていう夢を見たんだよ。」
「面白い夢だな。」
風丸と二人で一つの机を囲んで弁当を広げながら、僕は今日見た夢の話をした。
風丸は僕の話を何だかにこにこしながら聞いている。
多分円堂と放課後デートでもするんだろう。
半田もこれくらい素直だったら良かったんだけど。

行儀悪くひじをついて箸をくるくる回すと風丸に怒られた。

「でも僕っぽくないでしょ?こんなロマンティックな話。」
「良いんじゃないか、たまには。」
「でも意味わかんないじゃん?星になって…とか自分で言ってて意味解んないもん。死んだの?みたいなね。」

皮肉ったような言い方しかできない、好きな子はいじめるタイプの僕があんな綺麗な心地よい夢を見て良いのだろうか?
と内心思っている。
風丸は少し困った顔をして言った。

「そうだな…。あ、夢占いの本とか図書室にあったよな。」
「載ってなかった。」
「行動早いな。」
「だってなんか意味深な気がしたから。」
「ふーん。」

僕と半田に似た人が、きらきら星になるとかさ。
何かを暗示してる感じがするじゃない。
風丸は弁当をつまむ箸を休めて教室のドアを見た。

「半田はまだなのか?」
「大方焼きそばパン争奪戦に巻き込まれてるんでしょ。」
「半田が買いに行ったのツナコーンなのに?」
「だって半田だし?
きっと中途半端にあんパンとか買って来ちゃうんだよ。」
僕は箸を休めることなく弁当を口に運ぶ。
半田が来る頃にはきっとほぼ食べ終わっているだろう。
からかってやれ。

「半田だからってそんな…。」
「風丸〜!マックス〜!焼きそばパンなんて嫌いだ!あんパンじゃないんだよ俺が買いたかったのは!」

無駄に良いタイミングで半田が戻ってきた。
予想通りすぎて怖い。
風丸がこっちを見てちょっと苦笑いをした。

「なんなの?なに話してたんだよ?」
「いや、別に?ふ、あははははは!」
「なに風丸その笑い方!?爆笑!?何で!?」
つぼに入ったらしい風丸がけらけら笑う中、訳が解らないで変な顔をしている半田。

良いぞ風丸!
もっとやれ!
「あははははは、半田、ごめんな、はああ。」
「良いけどさ…。」
不満そうに椅子をたぐり寄せて座り、あんパンを頬張る半田。
僕は食べ終わった弁当を片付けて、あんパンを頬張る半田を眺めた。

「な、何だよ!」
「ん?別に?」
「う、こっち見んな!」
「照れてるの?」
「〜っ!照れてない!」

にやにやしながら見ていると半田がちょっと赤い顔でこっちを睨んだ。
それからマイペースに弁当を食べていた風丸に話しかける半田。

「俺、今日変な夢を見たんだ!」
「へえ。どんなのだ?」
「マックスみたいな奴と歩いてる夢。」

「え。」
「俺さ、なんか前世みたいな感じがしたんだよな!ふわふわしてて良く解んないんだけどさ。」

半田はそう言ってあんパンを全部口に放り込んだ。
風丸はこっちを見て口をぱくぱくさせている。

「もしかして最終的にお星様になっちゃったり?」
僕がそう口を挟むと半田は驚いた顔をした。

「そう!」
「それが前世?僕と一緒にいるのが?」
「う…。」
「前世も僕と一緒が良い?」
「そ、そうだったら、良いなって思った!マックスの馬鹿!悪いかよ!」

顔が真っ赤になっている。
可愛いなあ。

「半田…。こっち向いてよ。ね?」
顔を赤くしてそっぽを向いている半田。
墓穴を掘って恥ずかしくなってしまうのが可愛いところの一つだと思う。
「やだ!からかうんだろ!」
「からかわないよ。」

僕は半田の頬に手を添えて。
疾風ダッシュの勢いで、僕らを隠すように立ち上がった風丸の背中に隠れて。
僕は半田にそっとキスをした。
そして耳まで真っ赤な半田の耳元で、僕は囁いた。

−それに君と僕は前世からの恋仲だったんだ−

ちょこっとからかいの色を混ぜたのは、僕もちょっと赤くなっているのを悟られないように。
似合わないロマンティックに酔わないように。
そんな気持ちからなんだ。

*それに、君と、

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