STORY

□母
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そろそろ暖かいから暑いに変わってくるこの時期に、
サファイアは外で遊ぶことよりルビーの部屋で過ごすことを選んだ。
普通は「ゆっくりしてね」とか言われるのかもしれないが、もうサファイアはルビーの部屋でくつろいでいるためそのセリフを聞けることはない。
「ママ、なんか食べるものない?」
とルビーはリビングにおりていく。
サファイアは一人、部屋に残された。あまり一人で残されることは好きじゃない。一人で何をしているというのか、と問いたくなる。
おもしろいわけではないが、エネコドールをぎゅっと抱きしめ、気を紛らわせた。

ルビーがお盆をかかえて戻ってきた。
「ママがおやつにケーキ作ってくれて
いたみたいなんだ」
ルビーは「ほら」とサファイアにショートケーキを突き出した。
ルビーの作るケーキも好きだが、彼の母親の作るケーキも絶品だ。
早速口にほうばる。うん、美味しい。
「さすがママさん。美味しかね〜」
いつも言ってるような気もするが、それはさておき。
「それはそうだよ。僕のママだからね」
と自信気にルビーはそうこたえる。
何であんたが偉そうにしとるとね、とサファイアが突っ込む。

…いつもの会話。だがサファイアはちょっと気になることがあった。
る、ルビーって…まざこん…ってやつなん…?
この間、サファイアがトレーナーたちとおしゃべりをしていたら「マザコン」という言葉が話題に上がったのだ。
そんな言葉を知っているはずもないサファイアはそこではじめてマザコンの意味を知った。
親にべったりするなんて信じられんと。
とサファイアは思ったのだが…
自分の想い人の彼にマザコン疑惑があるとは思ってなかった。
トレーナーから聞いた話だと、マザコンというのは母親が一番に好きで、好きな人の対象も母親のような人らしい。
あたしよりママさんのほうが好きと?
ママさんのような人が好きと?
あたしとママさんって全然性格とかも違うやん…

そんなことをぐるぐるぐるぐると考えていたためサファイアにはルビーの声が届いていなかった。
「サファイアー。サファイア、大丈夫?」
「…え、あ、うん、大丈夫とよ」
こんことをあいつに言ってもいいとかな?
意を決してサファイアは口を開いた。
「あ、あんた、もしかして、マザコン?」
「はっ!?」


まだ続きます
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