STORY

□父
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「ただいまとっ!」
勢いよく窓を開け、家に飛び込んだ。
父ちゃん〜?と呼びながら部屋を見渡し、いないことにがっくりと首をうなだれる。
今日は父ちゃんの誕生日。
男手ひとつで私を育ててきてくれたから、この日は日ごろの感謝を伝える大事な日。
忙しいのは十分わかっているけれど、誕生日は一緒に祝いたかった。
「せっかくルビーに手伝ってもらったとに、、、」
はぁーとため息をついた。
ルビーと一緒に作ったバースデーケーキ。
最初は全然食べれるものじゃなかったが、あのルビーも美味しいと言ってくれるぐらいに腕は上がった。
けれど一人で食べるのじゃ意味ない。
しょうがないったい。父ちゃんはすごい研究者やけんね。
と一人でいいながら一応2人分に分け、もう少し、もう少し待っとこ、とつぶやいた。

夜は更けて
いつの間にかサファイアは眠っていた。
温かいものがかぶせられていて、それが毛布と気付いくのには数秒かかった。
その後、ボゥっとしていた頭が一気に覚醒した。
なぜなら目の前に今回の料理の師匠が座っていたからだ。
サファイアがなぜここにいるのか聞こうとする前に少年は言った。
「もったいないね。サファイアが頑張って作った美味しい料理なのに。
 あったかいうちに食べたら最高だよね。」
「、、、でも今日多分父ちゃん帰ってこんけん、あたしがこれ食べんとね」
ばつが悪そうに笑った。
「じゃあ、ボクも食べるよ。一人で食べるよりそっちのほうが楽しいでしょ?」
じゃあ、温めよっか。
とルビーはいって台所へ走って行った。

ほんとに、バカなやつ。
自分も食べたやろうに、あたしにつきあってくれて。
ルビーのいいとこ。優しいとこ。
そんなルビーがあたしは大好きとよ。
(どんなルビーも好きやけど)
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