「逢哀恋歌」 第三話
※名はデフォルト名で失礼します。
佐助も病が移ったのであろうか。
それとも柱に頭をぶつけでもしたか。
こ、こここここいなどと、きっと打ち所が悪かったに違いない!!
そろそろ軽い暇でも出した方がよいかもしれぬ。うむ。それがよいな。
「脳内で勝手に決めつけないで!柱に頭ぶつけてたのは旦那でしょ!俺様別にどこも悪くないから。むしろ絶好調だからね!」
「決めたでござる!佐助!そなたに少しの間、暇を与えよう!疲れた身体を存分に癒してこい!」
「頼むから俺様の話を聞いて!!」
庭から這い出して来た佐助は何か言うとすぐその場に膝をついて震えだした。
そんなに休みがほしかったのでござろうか?
「………ぐす、…別に旦那が人の話を聞かないのは今に始まったことじゃないから別にいいんだけどさ。そんなんじゃその女の子に嫌われちゃうよ?」
「な!!」
「だって話してても勝手に突っ切っちゃうし?相手さんも呆れかえるね、絶対」
「ぐ…!」
悔しいが佐助の言葉に何も言い返せぬ。
確かに昔から父に「もう少し落ち着け」とよく言われていた。まさか今ここでそれが問題となるとは……!!この幸村一生の不覚!
「あ、いや、その……不覚とは別にあの女子と決して話したいとはそんな全く思ってはござ、ござらぬゆえしかし!!」
「……あー分かったから落ち着いてってば。日本語変だから。とにかくいったん部屋に戻ろうよ」
「甘味はあるか?」
「………女中さんに聞いてみる」
コロッと態度が一変した主の恋路に不安を覚えながら、佐助は肩を落として生き生きと歩き出す幸村の背を見送る。
そして幸村が角を曲がったところで気付く。
「ちょ、また迷子になるって!!」
急いでその後を追いかけた。
*****
「私、若虎様を探ってきます!」
「え……?」
突然宣言した充にアキは思わず聞き返した。
もうその話は終わって、充が女中長の愚痴を面白おかしくアキに話し聞かせていたというのに、その話題転換に驚いたのだ。
「どうして?」
「………誤魔化しても仕方ありません。ずばり、気になるのです!その若虎様が!」
「まあ。充にもやっと春?」
嬉しそうに両手を揃えるアキに充は頭を振って即座に否定した。
「違います!ずっと気になっていたのです……その若虎様が噂に聞く豪傑で、お心が海のように広い方なのかをこの充が確かめるのです!!」
「ふふ、好奇心旺盛ね。あまり失礼のないようにね?」
「はい!」
元気よく頷く充の目は怪しく光っていた。
(任せてください!姫様にふさわしいかどうか、この目で確かめてきます!!)
笑顔で見送るアキに充は心の中でそう決意した。
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