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『その向こう側には。』
〜番外編〜
《さくらのソプラノ音》
お楽しみください^^★
空は、綺麗なあお。
上には、綺麗な舞い散るぴんく。
こんなに綺麗な景色なのに
似つかわしくない、
涙目の女子。
声を、
かけずには居られなかった。
それが、 キミ。
◆さくらのソプラノ音◆
「どうかしたのか?
何か困っているのなら、ボクが協力するが…」
真新しい制服具合からして、自分と同じ一年生なんだろうと思った。
だが、クラスは違う。…と、思う。
同じクラスの生徒は、名前も顔もすべて覚えたハズ。
将来的に生徒会に入ることを見越して、それくらい当たり前の事だ。
涙目のキミは、
顔を桜に向けたまま
こちらをチラリとも見ず
「…よかった」
と、ちいさく呟いた。
「…取ってほしいんだ、」
上を向いたまま話をするので
つられてボクも上を見る。
綺麗な、満開の桜。
少し散り始めてはいるが、申し分ない美しさだ。
…だがしかし、
木には何も引っ掛かってもおらず、ボクが取れそうなものは何もないようだが…???
「…ちがうの。」
そう言うキミは、まだ上を向いたまま。
「なにが違うと言うのだ?」
「背中…。」
「はぁ???」
背中を見てみる。
真っ白い、まだおろしたての制服。
それと…、
少し透けて………、
うっすらと…………
ピンクの……………………。
…いや!
なんでもないっ;!!!!
ボクは慌てて見なかった事にした。
顔が少し熱くなったのがわかったが
こちらをピクリとも見ようとしないお陰で、運よく気付かれずに済んだ。
「な、な、何もないが;!!?」
……動揺は、
声を通してバレてしまったかもしれないが;
「違うの!背中!中に入っちゃってっ…;;!」
「は?????」
「け…、…毛虫っ、」
−−−−け、毛虫っ!?
いや…、
いやいやいや…!
ちょっと待てっ!!?
「ソレをボクに取れと言うのかっ////!!!?」
「そうよっっ!!!」
「ま、ま、待て!!?
よ、よーし;!ボクが今女子を呼んでこよう;!!!」
「無理無理無理っ!!!今がチャンスなのっ!!!」
「な、何がだっ!??」
「今ならブラについてるのっ!
これ以上コイツが動いたら肌に当たっちゃう……っ!」
−−…どこがチャンスなのだーーっ!!!?
むしろボクにとってはこの上ないピンチだろうっ!!?
生徒の見本である生徒会に入ろうとしているこのボクが!
見ず知らずの女子の制服の中に手を入れる、だとぉ…っ!!!?
「そこら辺に枝とか落ちてない!?それで突いて落としてよぉっ!!」
…−−あ、なるほど。
その手があったか………。
…いや!
いやいやいや;!!
別に残念がっているわけではないぞっ;!?
覗くのには変わりないじゃないかーっ;!!
「枝あった?あったなら、シャツ、スカートから出すからっ」
「ち、ちょっと待て!?枝はあったが……、って、
…………ホントにやるのか;!?」
「当たり前でしょう!!?もぅ私、ほんっとに怖いんだからっ!!」
そういうキミは、確かに
背中にシャツが当たらないよう
小刻みに震えながら、上を向いている。
さっきから、ずっと。
…ずっと、一人で
怖がりながら。
誰かが助けてくれるのを、
じっと、待っていたのだろうか?
「…ボ、ボクは覗いたりしていないからなっ;!!」
「いいから早くっ!」
後ろに立ち、
襟を掴む。
シャツを彼女の肌から遠ざけるよう開くと、
強い言葉とは裏腹な
華奢なうなじにドキッとさせられる。
(…な、何を見とれてるんだ、ボクは…っ;!)
気を取り直す為にも
唾をゴクリと飲んだ後、
ほんの少し、本っ当に少しだけ…
シャツの中を覗く。
ピンク色のソレに、黒っぽい毛虫を確認する。
「お、落とすぞっ!?」
「はいっ!!」
覚悟を決めた、キミとボク。
襟から手を離し、
スカートから出ているシャツの裾を今度は開く。
「せーのっつ!!」
一度はスカートに落ちてワタワタしたものの………、
無事、毛虫救出!?
「はぁ…、はぁ…………っ;」
妙な冷汗を流した二人は、同時に地面にへたれる。
「あ、りがとう…、ございまし、たっ!」
「あ、あぁ…。もう大丈夫か?」
「うん。あ、シャツ、スカートに直すからあっち向いてて。」
さっきまで堂々と覗かせておきながら今更!?とも思ったが、素直に視線を反らす。
向かう先は、ピンクの空。
「キミは毛虫が背中に入るまで、ずっとこの桜を見ていたのか?」
「…うん!綺麗でしょう!?
特にここから見た色が最高に綺麗でねー!」
「色が???」
「そうそう!いいから、立ってみて☆」
そうやって、さっきまで毛虫と格闘していた場所にもう一度、二人並んで立つ。
「こうやって、四角を作ってね、」
両手の親指と人差し指を使って、四角を作る。
「ほら、ココっ!覗いてみてっ!」
仕方なく、キミが作ったファインダーを横から覗く。
「ほぉ…!これは凄い…!!」
「桜のピンクと、空の青が絶妙なのっ!!」
そう、
目を輝かせて話すキミもピンク色。
たぶん、
桜と太陽のいたずら。
それを間近でみた
ボクの鼓動は、
うるさくて、うるさくて。
高い
高い、
ソプラノのような音が響いていて……−−−−。
これもきっと、
空のあおと
桜のぴんくの、
いたずらだろう…−−−。
「キミは…、ボクがここに来なかったらどうするつもりだったんだ?」
「…来てたよ。『誰か』はね、きっと。」
誰か?
人が通る気配などしなかったが……?
「…結局、私のピンチには、間に合ってくれなかったなぁ、また…。」
少し渇いた笑い顔。
「…???言ってる意味が…?」
「…もう、行くね!
ありがとうございましたっ!」
深々と頭を下げて
そそくさと去って行った。
あの時から、
きっと
ボクは、キミの事が……−−−。
空は、綺麗なあお。
外は、綺麗なピンクがちらほらと。
隣には…、
あの時の事を忘れているであろう
キミが…−−−、
「今日は日直よろしくね、椿くん」
ピンク色の眩しい笑顔…−−−。
fin.
夢主と椿との出会いの話。
どこのサイドストーリーに入れようか迷った揚げ句、たどり着いたのはここでした;←
お粗末さまでした!
2010.4.5