企画小説

□鳳宍 甘
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こんなに動揺したのは、一体何年ぶりだろう。






















「俺、宍戸さんが好きなんです」


コートに散らばったテニスボールを拾いながら、そいつはあっさりと言ってのけた。

当事者である筈の俺は、ただただ爽やかに笑う後輩の顔を眺めるばかり。


「…冗談だったら才能ねぇな」

「まさか。俺は本気ですよ」


いつも通りの笑顔を崩さず、俺の聞き慣れない言葉をべらべらと喋る長身くん。

その驚くほど忙しない口に、ボールをぶち込んでやりたくなった。


「…って、宍戸さん聞いてます?」

「聞いてるわけねーだろ。パニック起こす寸前だわ」

「そんな堂々と言わなくても」


宍戸さんらしい、と柔らかく笑うこいつからは、到底ソッチの世界の匂いはしない。

かといって先輩をからかったりするやつでもないことは、俺が一番良く知っていた。

だからこそ悩んでいるわけで。


(手の込んだ冗談か、それとも…)



――――その時ふと思い浮かんだ、一番説得力のある理由。


きっと今俺の頭上には、電球マークが浮かんでるはずだ。


「どうしました?」

「いや…あ、俺もお前のこと好きだぜ」


そう言って笑い掛けると、今まで煩かった銀髪は目を見開いて固まった。


――――きっと長太郎は、敬愛の意味で言ってくれたのだと思う。


ならば俺も、そういう意味を込めて返事をするべきなのだ。

もっと早く気付けばよかった、と心の中で舌を打ち、停止していた両手を動かす。

危うく着替えの最中だってことを忘れてしまいそうになった。

ふと静まりかえった後輩を見ると、驚きと歓喜が混ざったような顔をしていて。

吹き出しそうになるのを必死に堪え、再びそいつに背を向けた。


「宍戸さん…今の、本当ですか?」

「は?あぁ、本当だけど」

「あの、お、俺っ、すごく嬉しいっス!」


首にマフラーを巻きながら、そうかそうかと頷いてやる。

珍しいやつだと感心しつつ、持ちなれた鞄を背中に背負った。














「あの、早速で申し訳ないのですが……手を繋いでくれませんか?」

「は?」















後悔半分、動揺半分。


それが、今の俺たちの始まりだった。





















「さっぶ!何やその青春さっぶ!鳥肌治らんようなったらどないしてくれんねん!あれやぞ、俺毎日ぶっつぶつやぞ!毎日ぶっつぶつの奴が部活やっとんのやぞ!ユニークやろ!頼むからそういうノロケは他所でやれそしてバックの鳳をどっかにああああああああああああああああああああああ」






















〜end〜

大魔人長太郎×無意識おノロケ宍戸さん+被害者忍足。

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