成瀬x七条
□輝く太陽と照らされ輝く月
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オカルトや占いが好きな僕のことを、郁は悪趣味だと言う。
僕は
誰かを呪いたかったのかもしれない。
僕の手を反対側から引っ張りあった父と母を。
僕の手を引っ張るだけ引っ張って、それぞれの仕事に戻っていく彼らを。
確かに、郁は僕の光だった。
この学園で、テニス界の貴公子と呼ばれた彼と会うまでは。
「ハニィ…それは何だい?」
僕が自室で月明かりに紛れてタロットをしていると、眠りから覚めた恋人が声をかけてくる。
「気になりますか?」
覗き込んでくる成瀬の金色の髪が僕の首筋に触れる。
「ぼくは、ハニィのやっていることなら何でも興味があるよっ」
向けられた笑顔は輝いていて、まぶしさまで感じてしまう程。
「タロットですよ。西洋の占いの一種ですね」
そう言って僕も笑ってみるけれど、結局いつもの笑みになった。
しかし彼の眼差しに射抜かれ、とっさに視線が泳いだのがわかった。
「ハニィ、どうしたの?ハニィがオカルト好きなのは何か…後ろめたい理由でもあるの?」
そして彼は鋭い。
「…ふふ、成瀬君にはかないませんね」
僕は幼い頃、両親が離婚しアメリカから日本に来たこと、日本では英語の通じない地元の小学校に入れられたこと、そして両親を恨んだことを話した。
「七条………」
彼は何も言わず、僕を背後から抱きしめてくる。
そしてゆっくりと語りかけられる。
「ぼくも占いとか幸運の御守りとか好きだよ」
ほらね、と彼が胸元から出したのは以前彼とオカルトショップでデートした時に彼が自ら買った、アフリカ部族の幸運のペンダント。
「七条は…みんなに幸せになってもらいたいんだとぼくは思うよ。」
「呪いの人形を買ったのだって…それは誰かを守るためだったんじゃないかな」
彼はどうして。
僕の闇を光に変えてくれるのか。
僕が一番欲しかった言葉をくれるのか。
「由紀彦…ありがとう」
僕は嬉しくて笑顔になった。
「ぼくは、臣のどんな笑顔も好きだよ。…だけどハニィには嬉しかったり、幸せだったりすることで笑う笑顔が一番似合うよ」
……んッ…ちゅっ…
今は、言葉は要らない。
だからこのキスに思いを込めた。
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