七条x西園寺
□産婦人科へ連れてって
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「西園寺さん、診察室へどうぞ」
「それでは郁。行ってきますね」
「……あぁ」
臣の楽しそうな顔に半ば呆れながら、私は上質なソファーの上で足を組み換えた。
「――臣のやつ」
アールデコ様式に統一された待合室にはかぐわしい紅茶の香りが漂っている。
しかし西園寺の目の前の紅茶は既に冷めていた。……――正直、今はそれどころではない。
(――私は……男だぞ)
(お腹の大きな女性に混じって私はこんなところで何をしている…ばかばかしい)
「――郁?――郁」
いつの間にか戻ってきていたらしい臣が私に微笑む。
「――ッ……臣。それで?どうだったんだ」
冷静を装ってみるものの、手に力が入る。
「おめでたです、郁。僕たちの子ですよ」
「――私をからかうのもいいかげんにしろ。大体私は男だ、そんなことあるはずがあるか」
「おや?――郁。郁は心当たりがあるから僕についてきたのではなかったのですか?」
残念そうに覗きこんでくる臣と目が合う。
「ッ!!――それは……」
確かに、突然何度か吐き気におそわれて臣に心配されたが……
「とにかく――わ、私は信じないからな!」
(どうせ臣のタチの悪い冗談に決まっている――)
そのまま私は待合室を飛び出した。