Novel

□青空の下、たまには息抜きを
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暑い、暑い大阪の夏。


クーラーのほとんど効かない教室を抜け出して、俺は屋上に来た。

日陰を探してそこに腰を下ろして音楽雑誌を読む。


風の音、車の音、鳥の鳴き声。


教室よりは静か。


日陰といえども、やっぱり暑い。


ペットボトルの水を日向にこぼしても数分で蒸発するんやろな。



「雪とか降ればええのに。」


ポツリとつぶやいてみた。


「そやなぁー。でも、それって異常気象とちゃう?」



聞きなれた声に顔を上げるとにこにこ笑顔の謙也くん。



「大丈夫なんっすか。3年生がさぼりとか・・・」


「こんな暑い日に世界史なんかやってられないっちゅー話や。」



隣ええか?って聞いてきたからどーぞ。って答えといた。




じゃないと後でうるさい。




謙也さんはんんーっ、絶頂!とか言いながら伸びをしてた。


部長の真似とかキモイっすわ。って言ったらどつかれた。



「謙也さんほんまに大丈夫なんっすか?仮にも受験生っすよね?」


「光に会いに来ただけや。さぼりやない。」


「アホ、それは列記としたさぼりや。」



丸めた雑誌で謙也さんを叩いた。



「何すんねん!光!!嬉しないんか!?」


「謙也さんがキモイからいけないんや。」



真っ赤であろう自分の顔を見せないように立ち上がった。




「俺戻りますんで。ほな。」



行こうとする俺の手を謙也さんがつかんだ。



「放してください。後輩の単位下げたいんっすか?」


「ちゃう。待てや光。」


「何すか!?」


「好きや!」


「は?」


「好きやって言いたかっただけや。」


「毎日会うたびに言ってるじゃないっすか・・・。そんな今更。」


「めっささっき言いたくなってな・・・そんでお前がいそうな屋上に来たんや。」



ちょっと涙目の先輩にきゅんとした事は秘密にしておこ。


自分より身長の高いアホかわいい愛しい人の頭をポンポンとなでてやった。



「今度の日曜日・・・遊園地でも行きます?」


「光ぅ!!」



ぎゅーと抱きしめられてもっと暑くなってきた。


白い雲に青い空、ギラギラの太陽。


顔が真っ赤なのは温度のせいかお互いのせいか、分からない2人。



吹き抜ける風が少しだけ熱を冷ました。


そして学校のチャイムが鳴り響く。



「謙也さん。もう1時間さぼりましょっか?」


「おう!」



この人の笑顔が何より大好きなんや・・・俺。


いつか言ってやろ。


謙也くんどんな顔するんやろな?


...

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