禁恋企画(´∀`* )!
□禁恋企画第4弾!
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シュンタバの音
「父様〜!!」
小さな手に、白色の花を持った少女は、ルズの実の子であるリーサだ。
「あー! リーサ様、ルズ様はまだご公務中なのですよ」
「いや、アゼル、いいんだ。ちょっと休憩したかっただけだから」
では、お茶をお持ちします、とアゼルは下がっていく。
「父様、父様! このお花はエーゼルワイスって言うんだって!! そこにいたお姉さんにもらったんだあ。なんだか、エルみたいな名前だね!」
エル――エルワイスはリーサの護衛兼教育係を務めるアゼル・ディーナリーの愛娘でリーサの話し相手となってくれる娘だった。
リーサは十になったばかりの、皇帝、ルズと王妃の間に授かった皇女のひとりだ。
後宮の中では誰よりも活発でいつもアゼルを連れては走り回っている。
その活発さで後宮を抜け出しこちらの宮廷にまでやってくることは少なくはなかった。
何度も来てはいけない、と叱ったがまったく効果がなく暗黙の了解となり、今ではこの有様だ。
「ねえ、父様。笛を吹いてよ!」
いくら、愛する我が子のわがままでもひとつだけ聞き入れられないものがあった。
「父様!」
それが、この"笛を吹け"である。
ルズの公務室にリーサが押しかけてきたときのこと。
彼女は見たのだ。
ルズの部屋の一番高級な調度品が並べられた棚にまわりとは明らかに格の落ちる古びた笛がるのを。
それを見たときから彼女は、ルズに笛を吹けと懇願するようになったのだ。
それ以来、彼女は公務室に来ていない。
厳しく叱ったのが一番の原因だが、彼女なりにそこだけは踏み込んではだめと判断したのだろう。
もちろん、王后やその他の側室はその理由を知っていて納得してくれている。
そして、ルズも彼女らを愛している。
だから、妻を娶り、子を授かれたのであって……。
彼は歴代の皇帝に比べると後宮に入っている女人の数は少ないだろう。
そうしたことは彼自身の心に、ある人が居るからだった。
その人も後宮に名を連ねる。
しかし、そこで彼女の姿を見た者は誰一人としていない。
ルズも皇帝の地位についてもう二十五年を迎えようとしている。
五十路を過ぎても若々しい彼はまだ息子に王座を譲る気はない。
そんな彼が皇帝の座に就く十年ほど前、今からではもう、三十五年前のことだ。