novelle

□妖精の雫
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妖精の雫



しとしとと雨が降っていた。

空は日が射している。

葉っぱの上にのる彼女にある少女が声をかけた。



「リミア、また泣いてるの?」



リミア、それは雨を降らす少女の名前だった。

ほんの十センチくらいしかない少女達の背には小さな薄い透き通った羽がついており、その羽で空を自由に飛ぶことができた。



「ほっといてよ、ルーシには関係ないじゃない」



リミアは顔を覗くルーシから顔を逸らし、答える。

雨の原因は、今日のテストにあった。

今日、魔法術学校のテストがあり、その中の実技テストのひとつで見事に失敗してしまったのだった。

ルーシはリミアとは正反対で魔法術は完壁に使いこなせる。

いつも一緒にいる二人だが、周りから比べられるばかり。

ルーシは頭がよくて優等生。

なのに、リミアは……、と。

もううんざりだ。



「失敗したっていいよ。リミアにはリミアのいいところがあるんだし、リミアにしかできないこともある思うの。
ひとつできなくてもふたつできたらそれでいいんじゃないかな」



晴れた空を仰ぎながら言うルーシの横顔をリミアはそっとみる。

その横顔は大人っぽく、優しい表情で今言われたこともすんなりと心に落ちてくるような気がした。

とても、自分と同じ年なんて信じられない。

そして、彼女の言葉はまだ続く。



「わたしは、運動が全くもって駄目だからせめて、勉強だけでもって思ってやってるよ? 
だから、リミアもこれは駄目だけどこれはできるからいいんだ! って思えばいいと思うよ」



しかし、リミアの性格はそうなかなか彼女の言葉に頷いてくれないのである。

返事が返せない自分が憎らしい。

口よ、動け、何度もそう命令を出し続ける。

けれども、口は動かない。

頷けない。



「じゃあ、わたし行くね!」



結局、返事は返せないままルーシは口を開く。

一言残し、去って行く彼女の背中をリミアは悔しそうに見つめていた。

ありがとう、といえない自分に腹を立てながら。


今度、雨が降るのははて、半年後か一年後かはたまた明日か。

ルーシのあの優しい言葉でリミアの思考が今までとは違う方向にまで目を向けられるようになったのはいうまでもないだろう。


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