頼れる姉貴は副船長!! U
□第41話
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「………」
「…エース?」
急に大人しくなったエースに、周りの奴等も疑問符を浮かべる。エースは呆然とした様子で床に座り込んでいた。
「…キイチ、は……?」
「…?」
「俺と一緒に、キイチはいなかったのか…?」
「? エースだけだったよい」
「他には誰もいませんでしたよ?」
「………ッッ!!!!」
バッ!と跳ね起きたエースは、驚く俺等を置いて物凄い速さで医務室を出て行った。一拍おいて俺等も急いでエースの後姿を追う。一心不乱に走るエースが向かった先は、キイチの部屋だった。
「キイチ…っ!キイチ!」
部屋の主が居ない部屋でキョロキョロと辺りを見渡して、居ないと分かると泣きそうに顔を歪めてまたさっきと同じように部屋を出て行く。次に向かったのはエースの部屋。ドアをぶち壊す勢いで蹴破ったエースは、お世辞にも片付いてるとはいえないような自分の机の中を漁った。
「確かここに……っ」
探しているものが見付かったのか、エースの動きが止まる。
(…あぁ、見付けてしまったのか。)
エースの顔は、こちら側からは見えない。
「………なぁ、マルコ…」
「…なんだよい?」
「キイチ……帰ってないんだよな…?」
「………あぁ、新聞にも何も載ってないよい」
「……―――っ!」
「…俺達だってずっと探してる。でも…何も見付からねェんだよい…っ!」
エースの掌に収まっている焦げたビブルカードがくしゃりと悲鳴を上げる。エースの肩が震えているのが見えた。
キイチ……皆、お前を探してんだ。
…なぁキイチ。
お前、何処に行っちまったんだよい……?
≡≡≡≡≡≡
「………ぅ、」
目が覚めて、真っ先に目に入ってきたのは真っ白な天井。それを見ただけで何故だか総毛立った。
「(、な…)」
この天井、見たことがある。
「うア゙あ゙あ゙あア゙あァ!!!!」
嫌な記憶が蘇ってくる。
白衣を着た奴等の声。
真っ白な天井と真っ白な壁。
切り刻まれる身体。
繰り返される薬物の注入。
カルテに記すペンの音。
ごとり、腕が落ちる音。
真っ白な壁が真っ赤に染まる。
狂ったように叫ぶ自分の声。
身の毛が弥立つような感覚、腕から上がる白煙。
脂汗が流れると同時に帰ってきた腕の感覚。
成功だ!と、湧き上がるカス共の歓声。
「……っ!!」
吐き気がする。咄嗟に口を押さえようとしたが腕が動かない事に気付く。目を向ければ鎖で繋がれていた。恐らく、いや確実に海楼石だ。
白い部屋。腕と足には海楼石の鎖。周りは白衣を着た知らない奴等。ナイフ、注射器、メス、得体の知れない液体。奴等の囁き声。気味の悪い笑み。
次々と思い出したくもない記憶が頭の中を駆ける。
どうする、どうする。このままだと、このままだったら、このままでは―――…!!
焦りだけが俺の脳を支配する。手足を動かそうとしても海楼石のせいか、以前から起こっていた妙な感覚障害のようなそれのせいか、ちゃんとした力が入らず鎖を僅かに軋らせただけ。ガンガンと脳内で警鐘が鳴る。嫌だ―――…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
ギィ、と。
真新しく見える扉が軋んだ音を立てて開いた。
「やあ、目が覚めたかい?―――研究体 NO,19786」
真っ暗な奈落の底に落とされたような気分だった。
聞こえぬ悲鳴
(研究体 NO,19786)
(それは それは それは―――?)
(心で叫んだ悲鳴は、誰にも聞こえなった)
*・*・*・*・*
うーん、全然話が進まない。
そして目を覚ましたはずのサッチとセツの影が薄すぎる件について(汗)
そろそろキイチの過去について書かないとなぁ…。
……長くなるだろうなぁ…(;´ω`)