頼れる姉貴は副船長!!

□第39話
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「…あんだけ強気なこと言っておきながらこんなもんなのか」



よくそんな実力で海賊王になるとかほざけたな、と続けてもう一度深い溜め息を吐く。俺の言葉が頭に来たのか、ティーチは勢いよく顔を上げたが、悔しそうに顔を歪めただけで反論する様子もない。

その姿を冷たく見下ろしたまま右手で持っている刀を大きく振り上げ、ギリッと音が聞こえるほど強く握った。



「――…これで、終わりだ!」



全身全霊の力を込めて振り下ろす。

これで全てが終わる―――















…そう、思ってたのに。



「―『闇水』!!」


「!?」



目の前のこいつの口から発せられた言葉に目を見開く。まだ悪足掻きをするのかと思ったが、奴の手の方向に言葉を失った。



「エース……ッ!?」



ティーチが掌を向けていたのは俺じゃなく、奴の真横……つまりエースへと向けられていた。


ティーチの掌に引き寄せられるエース。
振り下ろされる俺の刀。

このままでは確実にエースを斬りつけてしまう!!



「っ!!」


―――ピタッ!



間一髪のところで刀を止める。かなり勢いをつけてたせいか、風圧だけでエースの前髪が数本だけパラリと散った。



「ゼハハハハァ!!どうしたァ!?エースごと斬りゃあ俺を殺せるかも知れないぜ!?」


「その前にエースが死ぬだろうが…っ!!」


エースの首を掴んで俺の前に突き出す形で止まっているティーチ。このまま刀を振り下ろしていたら、と思うと冷や汗が出る。



「エースを放せ!!」


「そりゃあできねぇ相談だ……ぜっ!!」



言い切るやいなや、ティーチがエースの首を掴んでいない方の手で俺の肩を掴んできた。反射的にその手を斬りつけようとするが、少しでも動けばエースを傷つけてしまうかもしれないと思うと、一ミリたりとも動かすことだできなかった。



―ゴッッ!!


「が…ァッ!!」



鈍い音が当たりに響く。ティーチが俺を掴んだまま地面に叩き付けたのだ。…っくそ…!こいつ、無駄に力が強ェ…!!

まるで脳味噌を揺さぶられたような衝撃の後、殆ど感覚の残ってないはずの俺に、頭が割れるんじゃないかと思うほどの痛みが襲った。



「く……そっ…!」



急いで体勢を立て直そうとするが、まだティーチに肩を掴まれているせいか、先程の衝撃のもあり頭がぐらぐらして中々立つことができない。

その間にもティーチは嫌な笑みを浮かべてエースを後ろへと放った。それを見て腹が立つのと同時に嫌な予感がした。そしてティーチはたった今空いた腕を振り上げた。



「おらァ!!」


「ぐ、ッガ……!!!!…ゴホッ!!」



力一杯に俺の腹へと叩きつけられた拳。さっきのよりはあまり痛みを感じなかったが、肋骨からミシ、という嫌な音が聞こえた。チッ…、何本かやられたな。

痛みはあんまり感じないが、口から血を吐き出す感覚は未だに慣れない。舌打ちをしてから口元を腕で拭った。



「っの…!!」



やられてばかりは性に合わない。銃を構えてティーチに狙いを定めるが…



「おおっと!」


「…っ!!」



またしてもティーチはエースを引き寄せて盾にする。撃ちたくてもティーチがエースに触れているからには撃つわけにはいかない。

刀を振り上げる事も、引き金にかけていた指を引く事もできずに顔を歪めた時、



―ババババン!!


「…ッゴフ…!?」



真後ろから聞こえた銃声と背中に走ったいくつかの衝撃。一体何事かと後ろを振り返ったら、大分離れた家の屋根の上に変な帽子と変な眼鏡のようなものをかけた男が銃を構えていた。



「このやろ……っ!!」



邪魔をしてきた男を撃とうしてと後ろに銃を体ごと向ける。だが、俺の前にいた存在を忘れていた。



「…俺を忘れてねぇか?」


「ッ……うア゙ぁ!!」



ベキン!と確実に骨が折れたであろう音が聞こえる。ティーチが俺の背中を踏みつけていた。また口から大量の血を吐き出し、次第に呼吸がしづらくなる。傷が治るとはいえ、骨が折れてしまったら最低でも数時間は経たないと完全に治ない。あぁもう面倒なことしやがって…!



「、かはっ…!…ヒュ…ーッ…!!」


「ゼハハハ!そろそろ観念したかァ?」


「ハッ、誰が…!!」



俺の髪を掴み、ニヤニヤと笑いながら顔を近付けてきたティーチ。その顔が物凄く癇に障ったから、べっ!と血の混ざった唾を顔に吐いてやった。


















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