頼れる姉貴は副船長!! U

□第43話
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あれからどれくらい経ったのか分からない。この異常な程真っ白な部屋から出ることのなかった俺にはいつ太陽が沈んだのかも、いつ朝日が登ったのかなんて分かるはずもなかった。ただ分かっているのは、あの白衣を着ている奴等は俺が意識を失うまで"実験"を続けて、俺が意識を取り戻したと同時に"実験"を始める。

身体に入れられる名も知らない水溶液は、鮮やかな青だったり透明だったり、表現し難い濁った色をしている時もあった。共通しているのは、俺の身体に入ったと同時に信じられないほどの激痛が身体中に奔るということ。こんな事を続けて何が起こるのだろうか。こんな事をしてまで何を得たいのか。俺には分からなかった。



「あ、起きたようですよ」


「それじゃあ、そろそろ次のステップに進んでみようか」



一体何度目の薬物が注入されたのか。白衣を着た奴等が言った言葉に疑問が浮かんだ。次のステップ…?



「まずは指からかな?」


「いや、とりあえず腕を深めに切るだけでいいんじゃないですか?」


「そっかー。んじゃ、メスちょーだい」



目の前で行われる、まるで日常的に行われるくらいに軽いノリの会話。一番近くにいた男に渡されたのは医者が手術に使うようなメスだった。部屋に明かりに反射してキラリと光ったそれにいやな予感しかしない。胡散臭い笑顔をこちらに向けた男が話しかけてくる。



「ちょーっとチクッとするけど大丈夫だよ。そのためにこれまで色んな薬を投与したんだからねー」


「…ぁ、…………っ」



止めろ!と言おうと口を開いたが出てきたのは掠れた声。あれほど叫んでいたらそりゃあ喉も悲鳴を上げるだろう、と今更ながら一人で納得する。喋ろうとするだけでも喉がひりひりとして痛い。だが、それよりも腕に近付けられるメスに恐怖心が浮かぶ。

ざくり、



「…………ぅあ゙…ッッッ!!!!」



メスはいとも容易く俺の腕に沈んだ。そしてその状態で横に引かれて腕の傷口が広がる。腕にどろりと血が伝うのが分かった。身体に変な薬を入れられた時とは違い、外傷を負うのは久方振りで肌が粟立つ。腕の痛みに眉を寄せた。

と、その時。男達が目を見開いた。



「!」


「これは…!!」


「ついに、!」



いつの間に離れていたのか、気付いたら腕の痛みと共にメスも俺の腕から離れていた。



「……?」



不思議に思って腕を見れば、傷なんて無かったかのように、それが当たり前だというようにいつもの俺の腕があった。ただいつもと違うのは、傷口があったはずの場所から流れ出たのであろう血がそこにこびりついていた。



「………」



思考が上手く働かない。
今、何が起こった?
俺は腕を切られて、血がでて、そして?



「成功だ…!!」


「は、はははは!!ついに成功したのか!!」


「これまでの実験は無駄ではなかったという事か!!」



白衣の奴等は狂ったかのように笑い出した。成功だ、成功だ。と嬉しそうに言葉を零す。俺にはその言葉を理解出来なかった。正しくは理解する余裕がなかった。


傷はどうした?
たった今ついたばかりの傷は何処へ消えた?
今俺は何をした?
何もしていない。
どうして、何が、どうやって?



俺は、どうなってしまったんだ?
















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