頼れる姉貴は副船長!! U
□第41話
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……パキッ
「……あ?」
持ってたグラスに罅(ひび)が入った。グラス全体に行き渡るほどの大きな罅。こんなこと、一度も無かったのに。
「なぁマルコ、このグラス綺麗だな」
「海と、空と……マルコの色だ」
「ん、よし。気に入った。これ買う」
「…大切に使えよ?」
「………キイチ…?」
ポツリと呟けば、何だかざわざわと胸の底から湧き上がってくる不安。唐突に海が見たくなる。前に進もうとしていた足は、完全に止まってしまった。
「……海」
ここから歩いてすぐに甲板へと出れるドアがあるはずだ。そうすれば海が見れる。足の向きを変えようとしたその時、
「マルコ隊長!」
「エリザ?」
正面から走ってきたエリザ。彼女にしては珍しく息を切らして。(いつもはキイチ以外の奴等に対して扱いが酷いため走るなんてことはまず無い)
どうしたのかと問えば、勢いよく顔を上げて叫ぶように答えた。
「エース隊長が、起きました!!」
「エースッ!」
「放せ…っ!!放せ!!」
「どうしたんだよエース!!」
「放せっつってんだろうが!!」
「落ち着いてくださいエース隊長!!」
「放せええええええ!!」
「おいマルコ!手伝ってくれ!!」
医務室に着けば大変な騒ぎになっていた。
暴れているエースを隊長達やナースが必死に取り押さえようとしていて、そのエースは周りの声が耳に入ってないようで我武者羅に暴れる。エースに巻かれていた真新しい包帯は、暴れた所為なのか血が滲んでいた。
「おいエース!」
「うるせぇ放せ!!」
俺が声をかけても「放せ」の一点張り。流石に俺等に能力を使おうとするつもりはないらしいが、流石にこれ以上暴れさせるとエースの身体に障る。どうすればいいのか図りかねていたらドアが勢いよく開いた。(というかぶっ壊れた。)
「一週間振りに目ェ覚ましたかと思えば…何を暴れてやがる馬鹿息子」
「「「オヤジ!!」」」
「…一週…間、振り……?」
ぴたりとエースの動きが止まった。その目はこれ以上ないほどに見開かれ、困惑に揺れている。
「オヤジ…今、一週間振りって…」
「…?あぁ、お前は一週間前にルーナに運ばれて瀕死の状態でここに帰ってきたんだ」
一週間前―――…
『―――――グォオオオオオ!』
「な……海王類!?」
「…何で、こんな時に……!!」
「っ他の隊長を呼んできます!!」
「あぁ、頼んだ――…っ!?いや、待てよい!!こいつは…キイチの――!!!!」
「確かルーナっていう海王類…!」
「! 口の中に何か――ッ!!」
「エース、隊長……!?」
「血塗れじゃねぇかい…!!おいエリザ!!早く医務室へ運ぶぞ!!」
「は、はい!!」
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