頼れる姉貴は副船長!!

□第38話
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「…にしても、」


「むぐ?」


「案外食うよな、お前」



俺の前に座っているキイチ。そしてその前に置かれている空の皿の数、計12枚。それは全てアップルパイ。しかもその皿に乗っていたのアップルパイは全て1/8カットとかではなく1ホールだ。こんな甘ったるいものばかり食えるこの女の胃袋はどうなってるのか知りてえ。飯を食え、飯を。



「…んぐ、まぁな」



最後の一口を口の中に放り込んで、キイチはまた1ホール食い終わった。そしてウェイターを呼んで…ってちょっと待て、何故また頼もうとしているんだお前は!!



「まだ食うのかよ!?」


「……駄目か?」


「(う、上目遣い!!)……い、いや…別にそういうわけじゃ……」


「パウリーの分際で俺のキイチの上目遣いを拝もうなんて1000年早いッポー!!」カシャカシャ!


「……ルッチの分際で俺の隠し撮りをしようなんざ1億年早いんだよ!!」


「グルッポー!?」



ガシャーン!と勢いよくルッチのカメラにティーカップを投げつけたキイチ。ルッチのカメラはティーカップによって粉砕したようだ。ルッチの悲痛な悲鳴が聞こえる中、キイチは呼んでたウェイターに「ティーカップは弁償するからあのカメラと共にあの腐ったゴミも片付けてくれ」と真顔で言っていた。おい、気持ちは分かるがウェイターの顔が引き攣ってるからその辺で止めてやれ。



「キイチ、そろそろ行くぞ」


「えー」


「えーじゃねえよ。いつまでここにいるつもりなんだよお前」



アップルパイだけで13皿も食ってんだから、高かった太陽の位置も大分傾いていた。キイチはまだ食べたいと渋るが、流石にこれ以上目の前でアップルパイを食べられると見てる俺が胸焼けを起こしそうだからマジで止めてくれと頼み込んだ。


ちなみにカクは途中でルッチの変態加減に呆れて帰ったらしい。




≡≡≡≡≡≡




「そういや、キイチは今日どうすんだ?」


「ん?」


「そろそろ日が暮れるだろ。どうすんだ?弟を追うのか?それともどっかに泊まんのか?」


「泊まるのならば俺の部屋にぶべっ!」


「おいハットリ、そんな変態から離れて俺の肩に乗っとけ」


「クルッポー!」


「(ガーン!)」←ルッチ



素直に俺の肩に飛んでくるハットリと何やらショックを受けているルッチ。まあ落ち込んでいるルッチは放っておいて、俺はコートのポケットを漁る。確かこの辺に入れてたような……。



「泊まっていっても全然構わないんだが…やっぱり今俺は黒ひげを追ってるからな」


「…そうか」


「悪いな、今度また来たら……………っ!?」


「? キイチ、どうした?」


「クルッポー?」



俺の驚いた顔に気付いたのだろう、パウリーやハットリが心配そうに聞いてくる。(ちなみにルッチは道の隅でいじけていた。)だが俺はそんなこと気にしている暇などない。



「………エース……?」



俺の手に握られているのはビブルカード。もちろんそれはこれから向かうべきところにいるエースのもの。

だがしかし、持ち主の命を表すそれが焦げて今にも消えてしまいそうになっているのは何故だ。



「おい、それ…っ!」


「ビブルカードじゃないのかッポー?」


「うわ復活してる!…ってそうじゃなくて!!」


「………」


「…キイチ?」


「ビブルカードは持ち主の命を表す…前に来た時そう言っただろ?」


「…あぁ」


「…そうだなッポー」


「これは、エースのビブルカードだ…」


「「!!」」



どういうことだ…!?エースがまさか誰かにやられたのか?いや、海軍なら簡単に撒けるはずだし…。だが他に考えられる可能性は……!!



「(…まさか、もう黒ひげに出くわしたのか…!?)」



それなら納得がいく。奴の能力なら俺らのような能力者を瀕死の状態にすることなんか容易いはずだ。現に、油断してたとはいえ俺でさえ一度負けている。くそ…っ!その可能性については考えてなかった…!!

ぎりっと強く拳を握り、大きく舌打ちをした。黒ひげへの怒りと、自分自身への苛立ちが悶々と込み上げてくる。

と、同時に何故か急激に胸の底が冷えてきた。



「………パウリー、ルッチ。悪いが今日はもう行く」


「あ、あぁ」


「全部終わらせたらまた来る。アイスバーグやカクにも言っておいてくれ。…あぁ、そうだルッチ」


「…何だッポー?」



突然呼ばれて疑問符を浮かべながら近付いてくるルッチ。その胸ぐらをぐいっと掴んで耳元に口を寄せた。(ちなみに、後ろではパウリーが破廉恥だ!と叫んでた。)



「(そのうち、俺の弟が来るって言ったよな)」


「(あぁ)」


「(…あいつのこと、期待して待ってろよ?)」


「(? どういうことだ?)」


「(それはあいつが来てからのお楽しみだ)」



不思議そうにするルッチから手を放し、パウリーに声を掛けてからコートを翻し海へ繋がる水路に飛び込んだ。

本当は俺が何とかするつもりだったが……ルフィなら、きっとあいつらを助けてやれる。そう信じてこの海の何処かにいるであろう末っ子に思いを託した。


…スモーカーから聞いたのは確かバナロ島、だったな。










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