頼れる姉貴は副船長!!
□第20話
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「…………」
早朝。モビーの甲板で無言で座禅を組み、膝の上に刀『阿修羅』、両脇に『阿形』『吽形』を置いて瞑想をするキイチ。現在は早朝のためか、クルー達はまだ寝ていて甲板は静かだ。
「………」
キイチは肩に鳥が乗った事にも気付かないほど集中している。キイチの肩に乗った鳥も、キイチの肩が心地良いのか、そのまま寝ようとしている。
『朝っぱらからよく飽きもせずに瞑想なんかできるな』
「…………」
誰もいない甲板に響いたあまり低すぎず、高すぎないテノール。キイチはゆっくり目を開き、その声がした方向を見る。
そこにいるのは、紫色の髪で黒い着物を着た人物。白ひげで着物を着ているのはイゾウかイゾウの隊の者しかいない。だが、その人物はイゾウの隊どころか、白ひげのクルーでもない。
「久しぶりだな、阿修羅」
『あぁ、最近暇だったから出てきた』
「…そんな簡単に出てきていいのか?前回出てきた時、結構辛いって言ってただろ?」
『………最近主が俺に構わないからだろ』
「?」
『だーかーらっ!最近、主が俺よりもそばかすとかパイナップルとかリーゼントとかばっかりに構ってたからだろ!』
「エースとマルコとサッチな。それ名前じゃないから」
阿修羅と呼ばれた人物は大人っぽい見た目なのに対し、キイチに文句を言う姿はまるで子供のようだ。しかも文句の内容も子供みたいで、キイチは笑った。
その様子を見た阿修羅は、むすっと顔をしかめ、いきなりキイチの膝に頭を乗せて横になった。……所謂、膝枕。
「阿修羅?」
『…うるさい。今、ココは俺の場所だろ』
「……ふふ、」
またしても子供のような言い草に、キイチはまた笑い、優しい手つきで阿修羅の頭を撫でる。すると、阿修羅は気持ち良さそうに目を細めた。
『…なぁ、『あーるじっ!』んなっ!おま『阿修羅ばっかズルイー!』うがっ……!!』
「ん?阿形に吽形か」
『うんっ!』
『久しぶり主ーっ!』
『てめェら……!』
いきなり出てきた阿形・吽形と呼ばれた者達は、見た目も言動も子供みたいである。二人とも顔も髪型もそっくりだが、髪は阿形が赤色で吽形が青色という正反対な色をしている。
二人はキイチの膝の上に乗っていた阿修羅の頭を叩き落とし、自分達はキイチの膝の上に座った。
「お前ら……」
『んふふー』
『久しぶりの主の膝だぁー』
『クソ餓鬼共が……!!』
『『ふーんだっ!!』』
『……(ムカッ)』
起き上がった阿修羅と睨み合う阿形と吽形。互いに敵対心が剥き出しである。その様子に、キイチは溜め息を吐く。
「相変わらずだな、お前ら……」
『だってこの餓鬼共が!』
『『だって阿修羅が!』』
「……、はぁー…」
もう一度溜め息を吐き、キイチはとりあえず阿形と吽形の頭を撫でる。それによって二人の顔は緩み、阿修羅は嫌そうに顔を歪めた。
『『えへへー』』
『…………(ギリギリギリ)』
『あだだだだ!』
『食い込んでる!指食い込んでるから!』
『僕らの頭潰れちゃう!』
『その小さい頭握り潰してやろうか……!!』
『『いだだだだだだだ!!!』』
『ふはははははは!!』
「とりあえず落ち着け」
流石にまずいと思ったのか、何やら愉しそうに二人にアイアンクローをキメる阿修羅を止めたキイチ。やっと阿修羅(のアイアンクロー)から解放された二人は、頭を摩りながら座り込んだ。
『頭がグラグラする………』
『僕は頭痛通り越して目眩がしてきた……』
『はんっ、貧弱な頭だな』
『『あ゙ぁん!!?』』
「(阿形、吽形。キャラが変わってるぞ)お前ら、いつになったら仲良くなるんだ?」
『『『一生無理だね/な』』』
「…………」
見事にハモった3人。実は仲良いんじゃねーの?とツッコミたくなったキイチだったが、実際にツッコんだら後がめんどうだろうから黙っておく事にした。
『あ、』
『そろそろクルー達起きてくるね』
「…そうだな。お前ら、戻れ」
『『了解っ』』
ぽふん、と軽い音と共に消えた阿形と吽形。キイチは両脇の2本の刀を持って立ち上がる。
キイチが瞑想を始めて数十分。薄暗かった空が、朝日によって明るくなっていた。
「…ん?阿修羅は戻らないのか?」
『……主、話がある』
「…そういう事は最初に言えよ」
『餓鬼共に邪魔されて言えなかったんだよ!』
「その前お前は俺に膝枕させたじゃねーか」
『……』
「目を反らすなコラ」
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