頼れる姉貴は副船長!!
□第14話
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朝、いつもならエースを起こしに行くキイチがいきなり俺の部屋に来た。それだけでも驚いたってのに、キイチは口を開いたかと思ったら驚きの一言を放った。
「ご褒美、何がいい?」
「……は?」
ななななな何だ?ご褒美?え、何だそれ。何のプレイだ。こら上目遣い止めろ、襲うぞ。
「何がいい?何でもいいぞ。して欲しい事があったら言ってくれ」
「そそそそそれってどういう「組み手大会のご褒美だ」……は?」
「昨日の組み手大会でマルコが一番良かったからな。それのご褒美」
「……」
…どうせそんな事だろうと思ってたよい……
「本当にそんなんでいいのか?」
「ああ」
結局俺が頼んだのは、明日島で一日だけ買い出し(という名のデート)に付き合ってもらう事。いつもならエースのせいでキイチと買い出しすら行けないから、デートとなると俺にとっては十分ご褒美となる。恐らく、キイチはデートだと分かってないだろうが。(天然だし)
「ん、じゃあ明日な」
「おう」
この時俺は、この話をエースが陰で聞いていたのに気付かなかった。
≡≡≡≡≡≡
翌日〜
「キイチ隊長!!」
「……エリザ」
「水臭いじゃないですか!!マルコ隊長とデー…、買い出しに行くんでしょ!?」
「おい、今何を言いかけたんだ。……って、何でそんなに目を輝かせて俺に近付いてくるんだ」
「うふふふふふ。買い出しに行くならお洒落をしなくちゃですよね、ハァハァ」
「(何かハァハァ言ってる!?)やややや止めろ近付くな!!」
「ナースの皆!!キイチ隊長を取り抑えて!!」
「「「了解ですナース長!!」」」
「何故ここでナース長としての威厳が出るんだお前!!?」
「酷いですねぇ。私はいつでも威厳でいっぱいですよぅ…?」
「ハァハァしながら近付いてきても説得力がねぇ!!」
「さぁ、皆!!私の……、マルコ隊長の為にもキイチ隊長を綺麗にお洒落をさせるのよ!!」
「明らかに今自分の為って言おうとしたよな!!!?」
てか買い出しなのにお洒落なんかしなくていいだろー!!!?というキイチの叫びが医務室に響いた。
≡≡≡≡≡≡
――…ガチャ
「キイチ、そろそろ行……」
「………」
「………」
何だ?部屋を間違えたか?と目を疑いたくなるような光景だった。部屋にいたのは、目を見開く程綺麗な、キイチ……だと思わしき女。
「……キイチ?」
「…………おぅ」
いつものキイチなら、そこら辺の男よりよっぽど男らしいのだが、こうしてみると女に見える。……いや、実際女だが。
「何があったんだよい……」
「エリザにやられた…」
……成程。エリザならやりかねない。あいつはかなりキイチの事を溺愛してるからな………。
「……」
しかし今のキイチは……綺麗、としか言いようがない。
普段ならズボンに隠れている、すらりとした足はミニスカートにより惜しみ無く露出してて、白い服の上にはいつものコートではなく、茶色の薄い上着の袖を胸元で緩く結んでいる。いつもは下ろしている髪も、今日は軽く巻いて高い位置で結んであるため普段より大人っぽく見える。
「…あ、あんまり見るな」
「…(そりゃ無理だよい………)」
いつもズボンだから違和感がするのか、スカートの裾を引っ張るキイチ。その様子をじっと見てたら顔を赤くしてうつ向いた。……何だこの可愛い生き物。
「(抱き締めてぇ……)」
「?、何か言ったか?」
「いいいいや、何でもないよい。ほら行くぞ」
慌てて手を差し出せば、キイチは笑って俺の手を握った。
「頑張れマルコ隊長!!」
「今日こそエース隊長に邪魔されず、デートを楽しんで下さい!!」
「あぁ…折角綺麗にしたのに何でマルコ隊長なんかに……」
「ナース長、マルコ隊長を応援してあげて下さいよ」
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