頼れる姉貴は副船長!!

□第7話
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「ん………?」



キイチが起きると、そこは知らない部屋のベッドの上だった。




「…ここ、どこだ?」


「お。起きたか」


「!!…誰だ………!!?」





いきなり聞こえた声に驚いたキイチは刀を取ろうとするが、刀が無い事に気付いて焦る。その様子を見たパウリーが宥める。




「落ち着け!!俺の名前はパウリーだ。んで、ここは俺ん家。お前が裏路地で寝てたから連れてきただけだ。…それと刀もちゃんとそこにある」



「………」




パウリーの説明を聞いて少し落ち着いたキイチは、ゆっくりとベッドから起きて周りを見回した。

パウリーの部屋は男の部屋にしては片付いていて、葉巻の匂いがした。そして、ベッドの側にはキイチの刀が置いてあった。










「……お前馬鹿か。裏路地で寝てたら襲われるぞ」


「…そうか?」


「狽サうか?、じゃねーだろ!」


「俺を襲う奴なんていないだろ」


「…それマジで言ってんのか?」


「?」





キイチはパウリーの言葉に首を傾げる。キイチは中性的で顔が綺麗に整っているため、キイチが街を歩いたら男女両方から注目を浴びるだろう。そんなキイチを裏路地に寝かせてたら……確実に襲われるだろう。







「(………天然?それともやっぱ男なのか?でも細いし抱き上げた時結構柔らかかったし………って俺は何を!!!!??)」


「あ、パウリー」


「ななななな何だ!!!?」


「?…名前、言うの忘れてた。俺はキイチっていうんだ。よろしくなパウリー」


「あ、ああ……」


「それと、一応言っておくけど俺は女だ」


「狽なっ……!!//」


「………?どした?顔が赤いぞ」


「(という事は俺は女を…!!!?)………は」


「……は?」



「は、は………は…………………………………ハレンチだぁぁあああ!!///」



「何が!!?」













とりあえずキイチはパウリーを落ち着かせ、2人は家を出て街を歩いていた。




「へぇ、パウリーは職長なのか」


「あぁ、1番ドックで働いてるんだ」


「……なぁ、俺やる事がないから見に行ってもいいか?ウォーターセブンに来たのは初めてじゃないんだが、一応観光に来たんだし」


「あ?別に良いがー……ってお前観光に来てたのかよ。旅人か何かなのか?」


「いや?海賊だけど」


「……え?」


「……あれ?言ってなかったっけ?」


「そんなの聞いてね「パウリー!!」……うげ、カク…」


「………(ビクッ)」


「おや?お前さんは?」


「あー……コイツは「…ただの通りすがりだ」…え?」



いきなり言葉を遮ったキイチを振り返ると、いつの間にかフードを被っていた。





「悪かったなパウリー、道を聞くのにわざわざ時間をとらせて」


「え?あ、へ?」


「それじゃ、世話になったな」


「あ、おい待たんか!」





通り過ぎようとするキイチの手をカクが掴むが……―




「………っ触るな!!!」


「……!!?」


「お、おいキイチ!?」


「…はっ…はぁっ……」





勢いよくカクの手を払い除けたキイチの手は震え、額には脂汗が滲んでいる。よく見たら目も涙目になっている。




「キイチ!!どうした!!?」


「や…だ……おれに、近づくな……!!」


「「!!?」」






キイチの様子の変化に気付いたパウリーはキイチに呼び掛けるがキイチはその声に応えず、いきなり走り出して水路に飛び込んだ。

後から追い掛けてきたカクとパウリーは水路を覗き込むが、水路の中にキイチの姿は無かった。









≡≡≡≡≡≡




「……はぁっ……はぁっ………さ、3回はキツイな………」


「クルッポー」


「…っ……はぁっ…?」


「ポー?」


「………(キュン)」





キイチは水路に飛び込んだ後、能力を使ってカクから大分離れた所で水路から出た。休憩をするために暫く屋根の上で休んでいたが、近寄ってきて首を傾げたハットリに癒されていた。





「ポッポー」


「……」


「クルッポー……」


「(可愛い……)」




頭を撫でると手に擦りよってくるハットリに小さく微笑むキイチ。いつの間にか体の震えも止まっている。






「ポー…」


「よく手入れされているな……お前の主はどこにいるんだ?」


「ポー!」


「……下?」




ハットリが指したのは下。つまりこの建物の下にいるのだろう。





「…、………」


「(…誰かと話してる?)」





≡≡≡≡≡≡




「………カク」


「…分かっとる。けど嫌じゃ」


「……上からの命令だぞ」


「じゃが、わしは絶対に嫌じゃ!!」


「…カク、周りに人がいる可能性もある。もう少し声を抑えろ」


「………嫌じゃ。烏は絶対に捕まえとうない」


「……理由は?」


「…怯えておった」


「…は?」


「わしが腕を掴んだだけで震えておったんじゃ!!やはり政府がしたのは…「はーいストップ」……おぬしは…!!」



「…"烏のキイチ"、だな」


「………ご名答」


「クルッポー!!」



「…ハットリ」


「ポー!」


「……はぁ」







いつの間にかルッチとカクの後ろに立っていたキイチ。キイチの肩にハットリがいるのに気付いたルッチはハットリを呼ぶが、イヤイヤという様に首を振ってキイチに擦り寄る。それを見てルッチは溜め息をついた。キイチはハットリの頭を撫でながらルッチを警戒するように睨む。





「お前ら、政府の人間だな」


「……」


「…あんまり大声で話さない方が良いぞ。他の奴らに聞かれるかもしれんからな」


「余計なお世話だ"烏のキイチ"…。世界政府はお前を血眼で探してるぞ」


「…はっ、政府の屑共に伝えとけ。『カラス一羽捕まえる事も出来ねェのかクソ野郎共』ってな」






キイチはそう言って立ち去ろうとするが、いつの間にか近づいていたルッチが目の前にいた。




「!!」


「『指銃(シガン)』」


「ルッチ!!止めんか!!」




ルッチはキイチに人さ指を突き出す。しかしキイチは後ろに跳んで避けた。カクはルッチを止めようとするが、ルッチは聞こうとしない。






「『剃(ソル)』」


「………っ!?」





ルッチはキイチの後ろに回り込み、羽交い締めにする、が……




「…『海花』」




バシャンッ




「…!!!?」




捕まえたと思ったらキイチは海水になってルッチの手から逃げる。





「………はっ、お前らに捕まる程馬鹿じゃねェよ」


「……」


「…?」




これ以上攻撃してくる様子のないルッチに首を傾げるキイチ。カクも不思議そうにルッチを見る。



「……何故光を失っていない」


「…?」


「ルッチ、何を…?」



「政府が貴様にしたのは相当な事だと聞いた。何故、お前は光を失っていない?」


「………最初からこんな風とはいかなかった。仲間がいたから光を取り戻す事ができたんだよ」


「仲間……」


「お前にもいるだろ?仲間」




キイチが指すのはルッチの後ろにいるカク。




「お前らも結構酷い事をされただろうが、俺程じゃないだろ?人間であるお前らはまだ立ち直れるだろうが」


「…俺達はもう人間じゃない」


「人間じゃない、ねぇ。俺からしたら、お前らは人間以外の何者でもねェよ」


「「…!!?」」



「……ま、どーせまた後で話すだろ。じゃ、またな」




キイチは屋根の上から水路の中に飛び込んだ。それを見ていたハットリは少し淋しそうに鳴いた。





「クルッポー……」


「………」


「…………」





ルッチとカクはキイチがいた所を複雑そうな表情で見ていた。
















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