頼れる姉貴は副船長!! U
□第54話
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「その一!何でもかんでも自分で解決しようとすんじゃねぇ!」
「うぐべっ!!」
「その二!家族を信じやがれ馬鹿野郎!!」
「ぶべべッ!!!!」
「その三!!太り過ぎなんだよこの野郎!!」
「いやそれ今関係な…ッごふぇ!!!!」
理不尽。この光景を見た者ならばその言葉で頭が埋め尽くされるだろう。それほどにキイチのティーチを殴る拳には容赦がなく、キイチの言い分にも無茶があった。
「大体身長344cmって何だよ人間じゃねえだろ!!」
「だったらオヤジはどうなんだよ!?」
「オヤジはオヤジだからいいんだよ!つーか勝手に口を開くな!!」
「げぶぅっ!!」
…再度言おう。理不尽だ。
「っ、て…お前のせいで傷に響く…!」
「俺ァ現在進行形で傷が増えてるけどな…!!」
「黙ってろ!!!!」
「いでぇ!!!!!」
真っ赤に腫れた頬を渾身の力で抓り上げるキイチ。ティーチは涙目通り越してマジ泣き状態だ。
「は、っ…はぁ…」
「はぁ、はぁ……」
「………」
「………」
「……ふ、」
「…ははっ」
「あっははは!!」
「ゼハハハハ!!」
「…馬鹿馬鹿しいな」
「あぁ、全くだ…」
ふっ、とキイチはティーチから手を放して立ち上がった。
「ティーチ、お前の気持ちも分かるよ」
ティーチもキイチに倣って立ち上がる。二人の間には遠いような、近いような微妙な距離が空いている。
「俺が同じ状態だったら、きっとお前と同じことをしてる」
キイチは首の包帯に手を添えた。その下に浮かぶ印を削り取るように爪で引っ掻いた。
「だけど…。だけどな、ティーチ」
――俺だって、どこかであいつらを裏切ってることになる。
「けじめはつけなきゃ、いけねぇ」
――ただ、それがまだ全員に気付かれてないだけ。
「白ひげ海賊団副船長及び、特攻隊隊長ゴール・D・キイチより命ずる」
――この事を知ったら、皆はどんな反応をするんだろうな。
「白ひげ海賊団二番隊隊員、マーシャル・D・ティーチ」
――裏切り者と罵るか?それとも同情して憐れむか?
「家族であるクルーを傷付け、剰(あまつさ)え殺害しようとしたその罪は重い」
――俺は、どっちもごめんだね。
「だから」
――そんなことされるくらいだったら、
「船を降りろ」
――死んでやる。
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