頼れる姉貴は副船長!! U

□第51話
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痛みを感じることがこれほどまでに辛いものだとは思わなかった。



「ゔ、あぁァアアアァ…!!」


「ゼハハハ!さっきまでの勢いはどうした、キイチ!?」



腕が痛い。脚が、腹が、頭が、全てが痛い。チカチカと点滅する視界の端に、ぼたぼたと血が落ちたのが見えた。

傷が治らない。痛みを感じる。

どちらも人間として当たり前のはずなのに、俺という化け物には衝撃的な事だったらしい。傷が治らないことに疑問が生じる。激しい痛みを感じて身体が動かなくなる。どうしたらいいのか、分からなくなる。



「オラァ!何とか言ってみろよ!」


「ぐあ゙ぁ…っ!!!」



ガッと腹を蹴られた。こんな奴に易々と攻撃させてる自分に苛立つ。何でだよ、さっきまで何ともなかったのに。動けよ、俺の身体…!何で、刀すら握れないくらい力が入らないんだよ!



「うぇ…、っゲホ、ゴホ…ごふっ!!」



胃から逆流してくる血が煩わしい。くそっ、咳き込む暇があれば刀を握れ!銃を構えろ!目の前の敵を切り刻め!!撃ち抜け!!嬲り殺せ!!!!



「ゼハハハ…!何だ、やっぱりキイチも大したことなかったんだなァ!エースも弱かったしなァ!!」





≡≡≡≡≡≡


〜シャボンディ諸島



「…おい、どうなってんだ?」


「烏のキイチが突然苦しみだしたんだよ!」


「最初の時は平気そうだったのに、どうしたんだろう…!」


「それよりも白ひげ海賊団は一体どこへ行ったんだ!?」


「………」



モニターを見れば血まみれになって地を這うキイチの姿。広場にはざわめく聴衆共。一体何が起こっているのか分かりゃしねェ。



「…おい、キラー」


「マリンフォードに行くというのなら聞かんぞ」


「……まだ言ってねェ」


「だが、そう言うつもりだったんだろう?」



ちっ、と舌打ちを溢す。こいつとは長い付き合いだ。キラーの考えていることが俺にも分かれば、キラーも俺の考えていることが分かる。マリンフォードに行けば危険な目に遭うというのは火を見るよりも明らかだ。

だが、何かせずにはいられない、というように体が落ち着かない。ガタガタと貧乏揺すりを繰り返す俺に、キラーが溜め息を吐いた。




≡≡≡≡≡≡




「キャプテン!どこに向かってるの?」


「着けば分かる。ベポ、手術室の準備しとけよ」


「アイアイ!」



どすどすと足音を響かせて手術室へと向かうクルーの背を見送り、重い溜め息を吐く。戦争の現状がどうなっているのかは定かではない。シャボンディ諸島を出てからは、モニターがないから確かめようがないからな。



「…キャプテン、本気で行くんですか?」


「当たり前だ」



後ろから声を掛けてきたペンギンに即答する。



「(気になることが山ほどあるんだよ)」



赤犬に腹を焼かれたはずの烏屋。なのに、一瞬姿が見えなくなった後にはその傷が全て治っていた。

ただの人間がそこまで早く回復できるはずがない。
なのに、烏屋の傷は消えていて平然と動き続けていた。



「(何か、ある)」



烏屋の傷は何故治った?

海兵達の顔は何故驚愕に染まっていた?

海軍は烏屋の"それ"について知らされていなかった?

そもそも、烏屋の傷は最初から治っていたか?



「…疑問だらけだな」



はっ、と鼻で笑って机の上に置いていた自身の刀を手に取った。



















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