頼れる姉貴は副船長!! U
□第50話
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一瞬にして海水に飲まれたマリージョア。波が去った後には海兵や海賊は疎か、そこら中に転がっていた瓦礫すら見当たらない。海水の水溜まりが残る地面には、刀や銃、大砲といった武器類だけが残っていた。
「ハアッハアッ…!!ゲホッ!!」
「くっ………は、あ…っ!」
仰向けになって大の字で寝転がり息を切らしているティーチ。その向かいには、膝に手を付いて何とか立っているという状態のキイチ。間にいたはずのサカズキやティーチの仲間の姿はどこにも見当たらない。
「キイチ…!お前、何しやがった…!!」
「…はぁっ、見りゃ、分かんだろ、?」
頬を伝うのは海水なのか汗なのか。ぐい、と手の甲でそれを拭ったキイチは『阿修羅』を地面から抜く。そして刃こぼれを確認するように空へと掲げ、刀身を優しく撫でた。
「俺と、お前だけのタイマン勝負だ。誰にも邪魔されないように舞台を作ってやったんだぜ?」
あの時はエースがいたからな。そう言うキイチは口端を歪めて嗤った。
「かかってこいよティーチ。今度こそ、終わらせてやるからよ」
≡≡≡≡≡≡
―――――ザアアアアアア…ツ
蛇が蜷局(とぐろ)を巻くようにして海水が集まったのは、とある船。
――――ザパッ!
「ぶはっ!!」
「…うえっ、俺、海水飲んだ…」
「痛ェ…もうちょっと優しく下ろしてくれよ…」
「全員、無事か…!?」
「俺もう駄目……あれ…?」
一人が声を上げればまた一人と声が上がる。安否を確かめるために上げられた声に、血で自身の服を真っ赤に染めたクルーが手を振った。しかし、その手は直ぐに傷を確かめるように服の上から腹を弄った。
「……何で傷、消えてるんだ…?」
「俺、肩からばっさり切られたのに…」
「こっちだって、腹に何発も弾食らって……」
「っ、おいエース!!!」
「「「「!?」」」」
クルー達が振り返った先にいたのは、今にも船から飛び降りそうなエースと、それを必死に抑えるマルコとサッチ。3人共、血に塗れた服を着ているが、彼ら自身は怪我など無いかのように暴れている。
「離せ!キイチが、キイチが…ッ!!!」
「落ち着けって!!まずはここが何処なのかを確認してからだな…!」
「その前にお前は能力者なんだから海に飛び込んだって死ぬだけだろい!!」
「じゃあマルコが飛べばいいだろ!!キイチが心配じゃないのかよ!?」
「心配に決まってんだろい!!!」
「おいっ、マルコもエースも落ち着けよ!!」
「「黙ってろサッチ!!」」
「黙るのはお前ら全員だアホンダラァ!!!!」
――ガァンッッ!!!
「「「うぐ……っ!!??」」」
雷が落ちる、という言葉がぴたりと当て嵌まる光景だった。白ひげの大きな拳が振り下ろされ、その犠牲となった隊長3人は反論は疎か、言葉すら出てこない激痛に悶え苦しんだ。
「お、オヤジ…ッ…!?」
「ちょ、俺もう頭割れた…!!絶対割れた…!!」
「――――〜〜〜…ッッ!!」
「うるせェ!!何処にいるかも分からねェくせにギャアギャア騒ぐな!何のためにキイチが俺らをマリージョアから遠ざけたと思ってんだ!」
「イゾウ…」
「…イゾウの言うとおりだ。お前らが騒ぐ気持ちは分かるが、キイチが俺達をあそこから遠ざけたのには何かの意味があるはずだ。キイチの行動を無下にするんじゃねェ」
「でもオヤジ…ッ」
『不安なら映像でも見ればー?』
『ここ、シャボンディ諸島に近いしさー』
「「「「!?」」」」
「お前ェ…」
『初めましてー…じゃないよね?』
『確か一回くらい会ったと思うけど』
「キイチの妖刀…」
『そっ、僕が阿形で』
『僕が吽形!』
『『よろしく☆/夜露死苦★』』
「「「「………」」」」
その後、2分ほど誰もが口を閉ざしたままだったとか。
『吽形のせいで滑ったじゃーん!夜露死苦なんて古いんだよー!』
『阿形のせいだって!よろしくなんて普通すぎるんだよー!』
「「「「(お前ら二人のせいだよ…)」」」」
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