捧げ物

「何やってんだ?オマエら」

書類を持って、やってきた吾代の言葉に、ソファの上で向かい合っていた、彼の上司二人が振り返る。

「!」
その顔を見て、固まる吾代。
そして、次の瞬間、盛大に書類を撒き散らし、物も言わずに逃げていった。

「何だ?雑用の奴め」
「何か用でも思い出したんじゃない?」
「そうか、用を足したくなったのか」
「ここにもトイレ、あるのにね」
「大きい方だったのだろう」
「恥かしいのかな」
「人には言えん病気を持っているのかもナ。男好きも大変だ」
「そうなの?」
「貴様はわからんでいい。寂しい男の事情だ」
「ふーん。よくわかんないけど、大変なんだね、吾代さんも」
「雑用の事はいいだろう。それよりヤコ、続きをするぞ」
「う、まだやるの?」
「当たり前だ。我が輩、最後までやると言ったら、やるのだ」
「いいけどさ。でも、やっぱり私、こういうの初めてだから、うまくできないよ」
「なに、気にする事は無い。我が輩だって初めてだぞ?」
「わかったよ…じゃあネウロ、目を閉じて」
「こうか?」
「うん。いくよ?」
「ん」
「…うまくいった、かな」
「どうだ?感想は」
「なんか、クセになりそう」
「そうか。では、次は我が輩の番だな。
そらヤコ、少し上を向け。…そうだ。ほら、動くな」
「だって…」
「目を閉じなくてもいいぞ」
「そうは言うけどさ、何か…はずかしいよ」
「口は閉じていろ」
「んんー」
「ほら、キレイに色づいたな」
「ホント?」
「ああ」
「えへへ。じゃあ、ネウロ、最後だよ」
「よかろう。始めろ」
「あっ、動かないで…」
「ム?」
「ん…でき、た」
「ふう」
「へへ」
「ふはは」
「…あんたら、ナニやってんの?」
「「笹塚さん」」
「!ネウロ…その顔…」
「どうです?似合いますか?」
「似合いすぎるよ」
「私がやったんですよ!」
「そう。ヤコちゃんのは…ネウロが?」
「はい」

楽しそうに笑う二人の顔は、ラメ入りの化粧でキラキラと輝いていた。
「可愛い、よ」
「有難うございます!」
「先生の魅力を一番良くわかっているのは、僕ですからネ☆」
「もう、ネウロったらv」
「じゃあ、帰るよ」
「あれ?何か御用だったんじゃ…」
「ん?いや、いい」
「そうですか?」

笹塚は、ビルから出た所で、その場に蹲っていた吾代に声をかけた。

「アンタも、災難だったな」
普段は、意味なくいがみ合う二人だったが、今、この時だけは同じ気持ちを共有していた。

「悪かったな。見に行ってもらっちまって」
「いや、うん。確かに、自分の頭を疑いたくなるよ、アレ見たら」
「アレ、助手のヤツ…」
「「似合い過ぎるよな…」」

不覚にも、現役女子高生より、大男にトキメイてしまった事にショックを受ける男達。
その頃、事務所では。

「ヤコ、可愛いな。チュッv」
「やんっ。折角キレイにしたのに!お返し!チュッvチュッv」
と、イチャコラし続ける二人の姿があった。

その日、ティーンズ雑誌の記者が、十代の女の子の憧れの人物特集の中で、弥子を取り上げたいと言ってやってきた。
その時に、試供品ですけど、と置いていった化粧品。
それが、事務所をこれほどまでにイカガワシイ雰囲気にしてしまうとは、思いもよらなかったであろう。
 
それからしばらくの間、探偵と助手は、
呼び出してもやってこない雑用や、現場で会っても目を合わせてくれない低血圧刑事に首をかしげる事になるのだった。
*****
『Spicy Moon』乃愛様への相互御礼リク
「じゃれ合って甘くハジケたお笑いモノ」
でした。
ヤコの笑顔を所望していただいたのですが、
含み笑いとかでスミマセン。
どうでしょうね、コレ。
こんなんですが、どうぞお持ち帰り下さい。
これからも、宜しくお願いいたします!

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[Bird in flight]の竹見様より頂きました!!早いですよ!リクした次の日に頂けるとは思っても見ませんでした。長らくご迷惑お掛けしております。こちらこそ宜しくお願いいたします。

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