捏造小説
□短編部屋
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情念引力
ドッ カァァァン!!
上空10.000メートルを通過中の国際線飛行機の窓に、爆音と衝撃が伝わった。
窓際の席で思わず伏せて身構えた私が、起きぬけに一瞬見たあの姿─‥・間違いない!と思った時には。
もうイビルブラインドをすっぽり被され、あいつと私は大慌ての乗客の中から姿を消した。そして今、あいつは私の膝の上に堂々と乗っかっている。
すぐさま『只今、気流の乱れが有りましたが問題ありません』とのアナウンスが流れた。
「うぐぐ‥重っ‥びっくりしたじゃないの!!」
「どうだこのアメーバめが」
「相棒でしょ!?ナメクジですらないじゃん!?」
「主人が帰ったというのに挨拶もなしか?」
「あんたこそ留守番ご苦労って労ってもいいんじゃないの?」
「フン、言うようになりよって」翡翠の瞳がこちらを向いた。
「‥おかえりネウロ」
不思議だ。離れていた年月を感じない。嬉しさを伝えたい衝動に駆られながら笑いかけた。
「‥ああ、ただいま」
「わっ」
急にグイッと腕を引っ張られ、通路に立たせられた。シートベルトいつ外したんだろ
「髪が伸びたな。あれから何年経った?」
「3年だよ」
「そうか」
そうして喋るたびに、ゆるやかに開く口許からは、三年前の日常が滲み出してきてネウロとの距離をじわじわと縮めていく。
「吾代さんも刑事さん達もみんな待ってるよ」
「フン、またこき使ってやる」
「うふふ、そうだね」
あかねちゃんが髪の後ろに隠れて、目の前の翡翠が近づいた。
触れる腕から心満たされて、抱擁される身体は歓喜に震える。
唇から受け取るのは[人類の進化を信じるエネルギー]
骨にまでそれを沁み込ませたいと思った。
end
小説コン用に書き下ろしました。
この2人は離れていた間の多くを語らなくても、もう眼を合わせるだけでお互いある程度のことは分かりそうです。
完全復帰の魔人と進化した探偵、最強コンビ結成ですねvv