針葉樹

□*悪戯は御菓子を呼ぶ
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人通りも多く、賑やかなかぶき町の通り。
そんな中を、自分の横を行く定春は他人より数倍の面積を取って進む。
擦れ違う人の殆どが迷惑そうな顔をするが、飼い主である自分と銀ちゃん、そして新八もそんなのは気付かぬふり。

道行く人、最近少し数が減った気がする天人、人々の話声…
何時もと何ら変わらない大通りに、何時もとは違うものがあった。

『――…銀ちゃん、あれ何アルか。南瓜がこっち見て笑ってやがるヨ』

通りの所々に、憎たらしく笑っている様な顔をした様々な大きさの南瓜達が並んでいる。
先程…いや、この前から気になっていたそれを酢昆布を持っていない方の腕を挙げてピッと指差し、隣を歩いている銀ちゃんに聞いてみた。

「馬鹿おめー、あれはシャックリーランラン≠チつーんだよ」

「銀さん、それほぼ間違ってます。ジャック・オー・ランタン≠ナすよ」

前を向いたまま淡々とした口調で答える銀ちゃんに、新八が横からヒョコッと顔を出しツッコむ。
自分の言葉を訂正された銀ちゃんは、心底どうでもよさげに「そうだっけ」と一言。

『何であんなの置いてるアルか、南瓜が大量入荷したから皆で遊んでるアルか?』

折角だから聞いてみよう、なんて思い、疑問を口にしてみる。
すると銀ちゃんは、どうでもよさそうな顔から面倒臭そうな顔に変わるも言葉を返す。

「あー…アレだ、新八の姉ちゃんが恐ろしいから皆で誕生日を祝ってんだよ、きっと」

「ちょっと、どんな嘘吐いてんですか」

本気なのかわざとなのか、またもやボケる銀ちゃんに新八がツッコみ、正しい理由を教えてくれた。
何でも10月31日はハロウィンで、その行事の一環としてシャック・オー・ランラン≠飾っているとか。
――…あれ、ジャック・リー・ランタン≠セっけな。ジャック・オー・タンタン≠セった気もするネ。

そんなどうでもいい事を永遠と考えていると、新八がハロウィンの説明をしてきた。
仮装してTrick or treat.≠ニ言えば、大人は子供に御菓子を渡さなければいけないらしい。

『馬鹿にすんじゃネーヨ、そんくらい知ってるアル』

本当は知らなかったけど、何だか悔しくなってそう言い返す。
新八は笑って「そっか」と返してきた。…何だヨ、知らなかった事は御見通し、みたいな顔しやがって。

……それにしても、良い事を聞いた。
確か、10月31日は丁度明日。

「…うちには御前にやる菓子なんぞねェからな。今月仕事無かった事忘れたとは言わせねーぞ」

銀ちゃんが、若干顔を顰めながらそう言ってきた。
――…今更そんな事言ったって、もう遅いアル。

明日は大人達の所を回って、沢山の御菓子を貰ってやるネ!
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