Novel

□優しい口付け・番外編
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「おい、イアル!」


名前を呼ばれて振り替えれば、同じ堅き盾のカイルが駆け寄ってきた。カイルは同僚であり、心から信頼を寄せている良き友だ。


「なんだ、カイル。もう見回りの交代か?」

「違うって。ただの談話に来ただけさ。…お前さ、最近元気ないけどあの子と何かあったのか?」

カイルが声を潜めて尋ねてきた事にイアルは目を瞬かせた。

誰の事を指しているのかは分かっているが、あえて分からないふりをした。


「あの子とは誰だ…」

「ほら、エリンちゃんだよ」

「エリン」と聞いて胸がツキッと痛み、同時にカイルが自分から何を聞き出したいのか、凡(おおよ)その目星がついた。

事あるごとに、カイルは俺からエリンの話をさせようとする。自分の家へと帰る度にエリンに会ったかを尋ね、会ったと言えば何を話したのかと聞き出してくるのだ。


イアルはカイルから元気がないと言われて訝しみ、身に覚えがない為に眉を潜めた。


「俺は別段普通だ。最近はエリンと会っていないが…」


そう。どういうわけか、エリンが来なくなった。エリンに最後に会った時、彼女の寝言を聞いて、俺は彼女が望む通りに行動した。
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