Novel

□舞い降りる幸せ
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真王の願い通り、無事に大公を助けた。そして、助けた事により私は闘蛇によって殺される。そういう運命だったのだ。


しかし、それを変えたのは自分が愛情を持って育ててきた王獣、リランだった。


「リラン!」


私は助けろと命令をした覚えはない。獣は愛情で従わせる事は出来ない。エサル先生の言葉が頭に何度も過った。

リランは殺されそうになっていた自分を助けてくれた。

鋭い歯が生えた口でくわえられたが、リランは自分を噛み殺さないように手加減をしてくれていた。


リランはどんどんと飛翔する。エリンの視界に見えていた闘蛇や兵の姿が小さくなってゆく。

エリンは安堵、恐怖からの解放、緊張の緩み、それらが重なり、段々と意識が遠退いてしまった。





エリンは暗闇の中に居た。何処が前で何処が後ろなのか分からない。手を伸ばしてみる。触れる事が出来るものはなく、闇以外に何もなさそうだった。

すると、エリンの耳に聞き慣れた王獣の鳴き声が微かに聞こえた。

辺りを見渡したが、リランの姿は見えない。


「何処に居るの、リラン!」


またもや、微かな鳴き声が聞こえた。自分を呼ぶ声が聞こえる。

エリンは無我夢中で、声が聞こえる方へと走っていった。





「此処…は…」


見慣れない風景がエリンの視界に広がった。カザルム保護場ではなく、誰かの家というわけでもない。

そこは、訪れた事がある真王の暮らしている宮の中だった。
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