Novel
□訪ね人
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イアルは堅き盾としての仕事が一段落し、自分の家へと戻っていた。
家には最低限の物以外は何もない。唯一目につくのは、仕事の合間に作っていたタンスだ。少し埃を被っているが異常は見られない。
タンスに触れていると、殺伐とした人生を過ごしている自分を安らぎで満たしてくれる気がした。
イアルは指物師としてしばらく集中をして未完成のタンスを仕上げる。
すると、家の外に気配がある事に気付いてイアルは息を潜めた。
(…誰だ?)
辺りに静けさが包み込む。人の気配は感じるが、何かをしている様子はない。
「あの、こんにちは。どなたかいらっしゃいますか?」
(エリン…?)
声でエリンだと気付いたイアルは目を見開き、中に入ってくるように促した。
家の中に怖ず怖ずと足を踏み入れたエリンは自分を見て苦笑をし、悪びれた子供のように言った。
「すみません。イアルさんが暮らしている家に来てみたくて、同じ堅き盾の方に尋ねたんです」
イアルは堅き盾と聞き、真っ先に友人のカイルを思い浮かべた。誰にも言うなと口止めをしていたはずだったが、どういうわけか彼女に話したようだ。