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□わたしは引き換えに刹那を望んだ
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触れる体温。汗ばむ体。
暗闇に聞こえる微かな声。貴方を感じさせる髪。優しい瞳。何もかもが今の自分には必要で、貴方に縋りつくように求めた。


しかし、それは現実では泡沫の夢と消える。


「イ…アル…――」


もう二度と、貴方に触れて確かめる事が出来ない。ガラスが床に落ちて割れ、姿を無くしてしまうように。

失ったものをもう一度と求めるのは罪だ。


現実味を帯びない罪は重ねれば重ねるほど、引き返す事の出来ない罰へと変わってゆく。

貴方のいない現実はあまりにも残酷で、貴方が居る夢の世界は恐ろしいほどに甘美だった。


現実では、もういない彼を思って嘆き悲しみ、夢では、彼に会えた嬉しさで求めるままに体を重ね、重き罪を重ねてゆく。


彼に会えるのが、その場所だけならば、私は全てを引き換えに、一時だけの悪夢に身を委ねよう。


Fin.

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