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□涙は私を添わせる
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外は雨が降っている。辺りの様々な音をかき消し、水が地面を打つ音しか耳に入ってこない。


(ずっと晴れていたから、久しぶりの雨…)


エリンは雨が降る音を聞きながら、昔懐かしい風景を思い出した。母と家の中で過ごしていたあの時、外は確かこんな感じだった。


どんよりとはいかないが、薄暗い雲が辺りを立ち込めている。草木は恵みの水を貰い、葉の上に溜まった水滴が下にポタポタと落ちてゆき。


獣ノ医術師として働いていた母は、私の憧れそのものだった。闘蛇を気遣い、甲斐甲斐しく世話をする母は、闘蛇に付きっきりだ。しかし、時間に空きがあると、自分に色々な話をしてくれた。



しみじみと思いながら空を見上げていた時に、一匹の鳥が上の窓へと留まった。そうだ、此処は見慣れた場所ではない。


エリンは真王の住む宮をぐるりと見渡した。大公を助けたあの一件からエリンは体調を崩してしまっていた。


(…本当は戻りたい)


休養をしているだけなのだ。カザルムに戻って、王獣の世話をしなければならない。しかし、それは憚(はばか)れた。

私は皆に心配を掛けてしまっている。
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