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□わたしはイアルを受け止める
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彼を物に例えるとすれば、まさに曇りガラスだ。見えそうで見えない壁。私達の間には、見えない不確かな壁がある。


ちょっとした一時。彼の顔を見た時、ぼんやりと彼は何かをみていた。

もしかすると、何かを考えていたのかもしれないし、思っていたのかもしれない。


(何を感じているんですか?)


私は彼でなく、彼の人生を歩んだわけではないから分からない。それもまた、彼も同じだと思う。

一緒に暮らし始めてからも、私はその事を彼に聞く事が出来ないまま、月日が過ぎている。


「イアル」


私が彼の名前を呼ぶと、彼は微睡みから醒めたようにゆっくりとした動作で私に微笑む。


「どうした、エリン」


優しい笑み、隠された思いを感じさせない声。

それを見て、聞く度に、私は涙が溢れそうになる。


「ずっと傍に居て下さい」

「それは俺の台詞だ」


私は彼の苦しみを聞けず、感じる事しか出来ない。

それでも、誰も彼を理解出来ないのであれば、私が彼の傍に居て、貴方の想いを受け止め続けていよう。

Fin.

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