Project
□今だけは傍にいて
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エリンは真夜中の星空を見た。黒色に白い光の粒をばらまいたような満天の星空は綺麗だった。
「言った通りだろう?」
「はい。とても綺麗です」
この場所に案内をしてくれたのはイアルだ。年に数回この風景が見られるらしく、私はそれを草原に寝転がって見ている。
「エリン、何をしているんだ?」
「あ、いえ、手を伸ばせば届きそうだなと思ったんです」
目の前にあるように見える星空には、やはり手は届かない。宙を掴む仕草となっている私の手の動きを、横に座ったイアルはたいそう不思議に思ったに違いない。
「それは無理があるな」
「ですよね。でも、掴んでみたいなって…」
星空に触れてみたい。触れないなら、ずっと消えずに空で瞬いて欲しい。
諦めて手を引っ込めると、カタカタと震えていた。着込んではいたが、何も付けていない手が寒さで震えている。
それに気付いたのか、イアルが無言で手を握ってくれた。
彼の手は男性だなと思うほど大きく、自由の手が隠れてしまう。
そんな彼の手が掴む物は戦いの道具。脳裏に掠めるのは彼が戦う姿だ。
(私は貴方を見守る事しか出来ないけれど…)
ずっと貴方の隣に居るから、貴方も幸せなこの時はずっと握り締めていて。
Fin.