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□涙は私を添わせる
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完全に調子が良くならない限りは、真王様や侍従、カザルムの教師や生徒はきっと自分を留めておくに違いない。


「甘えて良いのかな…」


知らず知らずの内に疲労を蓄積していた。しかし、これほどまでに体が疲労したとは思っていなかった。

倒れてしまってから、気付いたのだ。こんな事では、母のような獣ノ医術師となれるわけがない。


エリンは気分転換に外へ出ようと思い、小さく頷いた。ゆっくりと立ち上がると、少し目眩が起こった。


まだ体調は十分ではない。頭を押さえ、しばらく固まっていると目眩は治った。


動かない方が良いとは分かっている。でも、何故かじっとしてはいられなかった。外は雨だと言うのに、わざわざ外に出掛けようとする自分が少し可笑しい。



(びしょ濡れになったら…)


エリンが真っ先に思い浮かんだのはイアルだ。真王や侍従は心配な表情を浮かべて労るだろうが、イアルだけは反応が違うだろうとエリンは予測していた。


(皆に心配を掛ける事も、イアルさんに怒られる事も…嫌なのに…)


思いとは裏腹に、体は動きたがっている。エリンは宮中の探索だけで済ませようと考え直し、扉に手を掛ける。そっと扉を開けて様子を伺ったが、幸いなことに人は誰もいない。
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