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□もしもシリーズ第二弾!
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そして、エリンの表情は笑っていた。死ぬ間際に苦痛を感じなかったようだ。それだけが、せめてもの幸いだった。
傍らの真王は暗く沈み切っている。自分に非があるのだと思っているのだろう。エリンの亡骸を見た真王は、涙を流し続け、ひたすら謝った。イアルはその時の事を思い出し、静かに目を伏せた。
自分は泣かなかった。いや、泣けなかったと言うのがふさわしい。亡骸となったエリンを見た時、どうしようもない自分への怒りや不安が抑えきれなかった。俺はただ抱き締めるだけしか出来なかった。
エリンの遺体は焼かれ、灰となって部屋の安置室へと置かれた。
エリンの笑った顔がイアルの脳裏に甦(よみがえ)った。彼女の吸い込まれるような碧い目と髪。それを二度と見る事が出来ない。
イアルは手に持った小瓶を上に翳(かざ)した。小瓶の中には、様々な薬草が調合された液体が入っている。これは睡眠薬となるもので、使い方を誤ると毒にもなる代物だった。
自分への怒り、腑甲斐なさが募り募ってゆく。イアルは感情のまま、勢いよく液体を小瓶に口を付け、飲み込んだ。