If...Paro...

□もしもシリーズ第二弾!
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迫っている兵士達は、既に大公がいない事を知らないのだろう。止まる素振りをしない。


「…ごめんなさい」



イアルはそうはっきり聞こえた。聞こえたとは言っても、そう見えただけだ。彼女が誰に向けて何と呟いたのかは分からない。そう呟いたとだけ感じた。


(エリンを死なせない。死なせたりなどしない…!)

先代の真王の後悔が頭に過る。自分が守らなければならない存在を、自分は守る事が出来ずに手からこぼれ落ちてしまった。俺は二度とあんな思いはしたくない。


イアルは馬から降り、駆け出した。動かない闘蛇達の中を駆ける。闘蛇特有の甘ったるい香りが漂う。闘蛇が走り、地響きが起こる。体が傾き、揺れた。



(ありがとう…)


エリンは溢れる感情が止まらなかった。頬に伝わる滴は暖かく、嗚咽が出そうになる。


彼は私の為に泣いてくれる。彼は私が死んでしまったら一体何を思うだろうか。自分を死なせた事による後悔なのか、それとも、私が母を亡くしたように、愛する者を失った苦痛を思うのか、私は想像出来ない。
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