御礼企画
□その先へ
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「今回の実習の説明をする。」
山田先生と土井先生の常とは違う佇まいに、ざわついていた教室の空気が一瞬で引き締まった。
私も思わず居住まいを正し、先生達を見上げる。
「お前達にとって、今回の実習は恐らく今までに経験したことのないものとなるだろう。が、この実習の合格無くしては次の実習も進級も無い。心して掛かるように。」
山田先生の眼差しには、いつもの柔らかさが一切含まれていなかった。
今回の実習のとんでもない重さと、合否によっては学園から立ち去らなければいけないことをはっきりと示され、皆の息を呑む音が聞こえた。
進級するに従い、忍者として学ぶ内容は過酷なモノへと変わっていった。
実戦さながら戦場に行き、戦禍を掻い潜りながら双方の情報を集める事も今や珍しくない。
指定の城に忍び込む技術も、情報操作能力も回数を重ねる毎に何とか形になってきていた。
それでも、
どんな状況にも対処出来るように様々な経験を積んでもなお知らない事が山程あって、その度に悪戦苦闘していた。
今度はどんな難題何だろうとどきまぎしながら、ちらりと横目で隣に視線を走らせた。
緊張した面持ちできり丸も先生達を見上げていて、更に緊張が高まってしまった。
じわりと汗をかいた掌を握りしめ、先生の話を食い入るように聞いていた。
「今回は二人組…双忍で実習に当たる。各自に内容を伝えるので呼んだ順に職員室に来るように。」
先ずは庄左ヱ門と伊助来なさいとの土井先生の声に、二人が立ち上がった。
私たちは何処かぎこちない足取りの二人の背中を見送り、そして互いに顔を見合わせた。
頭の片隅でうっすらとその実習内容を予感しながら―――
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