御礼企画

□焼き餅妬いてみました
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知っているから‐‐‐後に引けないくらい判っているから、不安にもなるのだ。



「利吉くんに誉められて嬉しいか?」


「はいっ!そりゃあ嬉しいっすよ!」


当たり前じゃないですかと言われると、まるで心の臓を刃物でグサリと抉られたような気がした。



思っていたより重症な己の反応に、ほとほと困り果て、苦笑いしてそうかと小さく呟いて読んでもいない書物に視線を戻した。


「…せんせ?」


きり丸は、俯くわたしを覗き込んでいた。


「…利吉くんは若手の中でも腕が立つ上に、かっこいいからな。」


喩え、きり丸の心が揺れたとしても仕方がないと思うくらいに…


「…そうっすね。」


己自身を誤魔化すように利吉くんを褒めれば、きり丸にあっさり肯定された。



更に重くなったみぞおちの辺りに不甲斐なさが込み上げる。



「…先生?何か勘違いしてませんか?」


きり丸は眉を寄せると、わたしの手元から書物を奪った。


思わず顔を上げたわたしを見て、きり丸は一度しか言いませんよと顔をしかめた。



「利吉さんはかっこいいですけど‐‐‐おれは…は組の事ばっかり考えて、心配性ですぐ胃を悪くする誰かさんの方がいいと思ってるんす……よ?」


きり丸はわたしの膝に手を載せ、ぶっきらぼうに呟いた。


わたしから逸らされ、すっかり泳いでしまったその視線。


横を向いてしまったせいで丸見えになった耳だけが、真っ赤に染まっていた。


もごもごと歯切れの悪いその言葉に、わたしの心は単純なまでに浮上した。


浮上した処か、年甲斐もなくバクバクと耳元で心音が鳴り響いているようだった。




「…お前より15も歳上の、胃炎持ちでいいのか?」


「いいに決まってるじゃないっすか!おれは、他の誰に褒められるより、先生に褒めてもらいたいんですよっ!」



喜んで貰おうと思ったのに、不機嫌になるんだもん。びっくりするじゃないですかっ!と、きり丸はわたしを見上げた。


恥ずかしそうな表情の潤んだ大きな瞳。


朱に染まった首筋に、わたしは恐る恐る手を伸ばし引き寄せる。


抵抗されることなく、胸元に収まったきり丸の黒髪に頬を寄せた。


「すまん。ちょっと利吉くんに嫉妬した。」


「…うん。そうかなって思いました。」


「良く頑張ったな。利吉くんに認めて貰えるなんて凄いぞきり丸っ!」


「うんっ!頑張った甲斐がありました。お駄賃も弾んで貰えたしねっ。」


素直に謝り、きり丸の髪をクシャクシャと掻き回しながら褒めると、わたしの胸元でクスクス笑うきり丸の振動が心地好く響いていた。








「でもね。…おれ、ちょっと嬉しかったです。焼き餅妬かれるのって意外と嬉しいもんなんすね。」



きり丸の思いがけない台詞に、わたしは肝が冷えたよと苦笑いして、あたたかなきり丸の背中を抱き締めた。











END





かすてーら様よりのリク
大変お待たせしましたm(_ _)m

土井先生視点できり丸にどきどきさせられる話でした。

どきどきっていうか、苛々もやもやの方が比率高いですね←

リクから外れてしまったような…す、すみません…焦


しかも利吉利吉言ってるし…(^_^;)

このお話のりっきーは取り敢えず恋敵のつもりはなかったんですが、お好きなようにとって下さい←

でも、焼き餅妬いてきりちゃんにドキッとさせられる先生が書けて楽しかったです!

素敵なリクを有難うございましたっ!

このお話はかすてーら様へ捧げますv








20100715






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