御礼企画

□月夜の一瞬
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形のいい額も、スッキリとした鼻筋もふっくらと柔らかそうなその唇も…


そのどれもがぼくのモノでは有り得ないのに…


触れたい…


抱き締めたい…!


沸き起こる抑えきれない衝動。


もう逢えなくなるという不安や寂しさや苦しさがグルグルと渦巻いて、


気付いたらきり丸の腕を引き寄せていた。


「…っ!団っぞ…」


きり丸の慌てた声が何故か遠くで聞こえた。


「ごめんっ。一度だけ。…今だけだから。‐‐‐一度だけ…」


抱き締めさせて…


最後は声になったかどうか判らなかった。


掠れたような僅かな息が洩れただけだったかもしれない。


それでも、きり丸は逃げることもぼくの腕を払うこともなく、ぼくの胸に収まった。



脳内でガンガンと警鐘が鳴り響いていた。


早く離れろと、もうひとりのぼくが喚く。


‐‐‐でも、離せなかった。




決して友達同士では有り得ないような抱き締め方をして、今さらどんな顔をすればいいのかさえも判らない。


それでも、唯一度だけ…


この一瞬だけは、きり丸はぼくの腕の中。


込み上げる嗚咽に、グッと歯を食い縛る。


「…アホだんぞー。」


場違いな程に呑気なきり丸の声と優しくぼくの背を撫でる掌。


「逢えなくなるわけじゃないだろうが。また…いつでも逢える。‐‐‐な?」


柔らかな、まるで子供をあやすようなその口調にぼくは苦笑いする。








‐‐‐ああ…ぼくの想いは決して届かないのだと、








その細くしなやかな身体を抱き締めながら、




ぼくはこの一時だけの恋人の甘い香りを嗚咽と伴に噛み締めていた‐‐‐










END




本当はきり丸は団蔵の想いに気付いてます。





匿名様のリクエスト

叶わないのに一途にきり丸を想い続ける団蔵でした。

切ない話、わたしも大好きです!団蔵本気で可哀想な展開で、本当にすみません(涙)

リクエスト嬉しかったです。本当に有難う御座いました!

すっかり遅くなってしまい、すみませんm(_ _)m

これからも宜しくお願いします!



匿名様に捧げます。







20100517






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