御礼企画

□好き嫌いはいけません
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やっぱり先生聞いてなかったか…


おれは内心、溜め息を吐きながら先生におれが持っていた弁当箱を差し出した。


「…先生。よーく見てくださいよ。これ誰のっすか?」


おれの手元にあるのはチェックのラインが入った弁当箱。


おれのは同じ形だけど、ストライプになっている。


「…あっ。わたしのだ。」


「そうっすよ。そっちがおれのです。先生が慌てて間違えたんですよ。」


おれがやれやれと言いたげに、首を竦めると先生はばつの悪そうな顔で頭をガシガシと掻いていた。


「…今朝は早朝会議で慌ててたからな。すまん、きり丸。…で、入ってないんだよな?」


練り物のことを尽かさず確認する先生におれは弁当の蓋を開けてみせる。



おれのには蒲鉾が入っている場所に、三つのウインナーがちょこんと鎮座していた。



「あっ、タコさんウインナーだぁ。」



いつの間にかおれ達のやり取りを間近で見ていた皆が、弁当を覗き込んでいた。



喜三太が可愛いね〜と言うと、その隣で庄左ヱ門が首を傾げる。


「土井先生はお弁当に何が入ってるのか、開けるまで知らないんですか?」


「…ん?そうだな。」


タコウインナーに気を良くした先生は、知らないことも多いかなぁと記憶を辿るように呟く。


「知らないんだ…」


伊助が何故か遠い目をしていた。


「きり丸っ!これは先生のこと甘やかし過ぎだよっ!」


団蔵が頬を膨らませて、ぼくなんか嫌いなものでも残してたらめちゃめちゃ叱られるんだからねっと喚いていた。


「そうだよ。ちゃんと教育しとかないと後で大変なんだから。」


しれっとした顔して、兵太夫が毒を吐く。


アハハと乾いた声で笑ったおれの隣では、先生が拳を握っていた。



「お前らなぁ〜っ!」



しっかり自分用の弁当箱を抱えた先生は、人間、一つくらい苦手な物があってもいいじゃないかと、力説していた。


おおっ!そうですねと納得する奴と、呆れ顔を浮かべる奴と半々かぁとおれは冷静に眺めていた。



「きりちゃん、たまには先生にも作って貰ってもいいんじゃない?」


乱太郎が大変でしょと、おれの肩を叩く。


「ん〜?してくれるんだぜ?‐‐‐ただ何かまだるっこしくておれがやっちゃう方が早いからさぁ。」


まっ、おれは気にならないからいいんだけどねと首を竦めたら、乱太郎はきりちゃんがいいならいいよと微笑んだ。


あー…、でもあれだな。


確かに団蔵や兵太夫の云うことも一理あるなとおれは呟いて…



「土井先生っ!苦手克服の為にも今日は弁当変えないでおきましょうかぁ?!」


力説を続けていた先生におれは意地悪く笑う。


「ダメだっ!絶対に駄目っ!勘弁してくれよ、きりまる〜っっ!」


半分涙目な土井先生が可笑しくて、おれ達は大笑いした。





幸い先生の苦手な練り物もおれは平気だから‐‐‐と言うかおれは好き嫌い無いし。



「しょうがないから、これからもおれが食べてあげますよ。」



パッと表情を明るくした嬉しそうな先生の横で庄左ヱ門が溜め息を吐いた。


「だから、それが甘やかしてるんじゃないか。」


やっぱり冷静な庄ちゃんの言葉に、おれは苦笑いする。


「でもまあ、ちょっとは頑張って下さいよ!」


そう言ったら、目に見えて凹む先生。


その背後には、馬鹿みたいに綺麗な青空があって‐‐‐



今日も喉かだなぁと、思わずにはいられなかった。








END






土井きり(親子)にポチして下さった皆様へ


本当に有難う御座いました〜v


何かちょいと情けない先生ですみません。


でも、そんな人間味のある土井先生がたまらん好きですv








20100428




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