御礼企画

□好き嫌いはいけません
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※現パロです。



雲一つない透き通るような青空が広がる屋上は、ぽかぽかと温かく眠気を誘うほど気持ちいい。


ランチタイムを過ごすには最適の場所で、おれは持参の水筒から麦茶を啜りながらのんびりと息を吐いた。



「はにゃ〜?きり丸ぅ。お弁当食べないの?」


いつまで経っても弁当箱を開けようとしないおれに、喜三太が唐揚げを口に頬張りながら、首を傾げていた。


「きりちゃん、お腹でも痛いの?」


乱太郎も心配そうに眼鏡の奥の瞳を細める。


屋上の片隅で纏まって弁当を拡げたは組のメンツの中で、おれだけ違うことをしていたもんだから、


皆は心配そうに顔を見合わせていた。


「…んっ、ちょっとな。もうちょっとだけ食べるの後にすっから、気にしないで皆食っててよ。」


心配顔した皆を見回して、どっこも悪くないからとおれは暢気に笑う。


実際どこも悪くないし、どちらかといえばこれから起こるであろう展開が楽しみで上機嫌な位だった。








「…きり丸っ!!」


バタンと大きな開閉音と伴に、うちの担任が顔を出した。


少し青ざめたその顔に、おれはにやりと口角を持ち上げる。


土井先生はおれ達の所に大股で近寄って来る。


その若干必死そうな顔におれは吹き出しそうになるのを、精一杯堪えていた。


おれの隣で乱太郎やしんべヱが不思議そうな顔してたから、おれは困ったように笑い掛けた。



「あれっ?何か先生怒ってるの?」


「ぼく達何かしたっけ?」


「…掃除サボったのバレたかな?」


口々にこの非常事態の原因を追求し始めたは組の皆に、おれはヒラヒラと手を振る。


「平気、平気。そんなんじゃないからさ。」


理由が判っているお陰で、一人だけ平然としているおれと土井先生を見比べては、皆して首を捻っていた。



「きり丸っ!ちょっと来いっ。」


「ほーい。」


おれは、ヒョイと弁当箱を持ち上げると先生の傍に近寄った。


案の定、先生もお弁当を持って来ていて、先生はおれの耳元で囁いた。



「…あれが入ってるんだが…」



「あれってなんすか?」


おれは緩む頬を片手で隠しながら、先生の顔を覗き見る。


額に冷や汗さえも浮かべ、緊張の色が隠しきれないその表情。



「…蒲鉾だっ!」


吐き捨てるように言ったその口調に、おれはとうとう我慢しきれず吹き出した。


隣で先生の眉がピクリとつり上がったことも良く判っていた。



「…っ、先生。おれ今朝言いましたよっ!ご近所に贈答用の蒲鉾をお裾分けしてもらったって。」


「だからと言ってわざわざわたしの弁当に入れる事ないじゃないかっ!開けた瞬間、固まったぞっ!」









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