御礼企画

□公然の秘密
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※年齢操作、きり丸高学年設定です。




「…で、新しく出来た団子屋ってそんなに旨いの?」


きり丸は頭の上で腕を組むと、今にも涎を垂らさんばかりのしんべヱを振り返る。


「そうらしいよぉっ!ぼくもね、休みになったら買いに行こうと思ってたんだよ。」



ニコニコとスキップでもしかねないくらい幸せそうな表情を浮かべ、しんべヱは少し前を歩いていたきり丸に追い付いついた。


「へぇ〜!そんなに美味しいんだ。楽しみだねっ!」


私も足早にきり丸としんべヱに追い付くと、ふたりは私の方を向いて頬を緩めた。



「お駄賃でお団子食べていいって言われてるしねっ!」


「おぅっ!学園長太っ腹だよなっ。」


口々に言いながらも、私の懐に仕舞われた学園長の小銭入れに視線を移しては、にやりと顔を見合わせる。


私は余りにも分かりやす過ぎるふたりに苦笑いしながら、一番美味しいのは何団子なの?としんべヱに尋ねてみた。







「おーい。乱太郎、きり丸、しんべヱっ!」


校門を出た所で後ろから土井先生に呼び止められた。


「どうしたんですか?」



私達が振り返ると、土井先生はホッとした顔をして頼みがあるんだと眉尻を下げた。


「町に火薬を買い付けに行くんだが、付き合ってくれないか?」



「ええっ?!…ダメッすよっ!今から学園長のおつかいで団子屋へ行くんですから。」


きり丸が不機嫌そうに答えている隣で、私がいいですよと答えると、しんべヱも荷物持ちなら任せてくださいと大きく頷いたものだから、きり丸の顔が恨めしげに歪んだ。



「火薬委員会は…伊助はどうしたんすか?」

諦め悪く抵抗するきり丸に、私は先生のフォローに回る。


「まあまあ、…きりちゃんたまにはいいじゃない。」


「そうだぞ。お前だって授業で使うんだし、手伝ってもバチは当たらんだろ。伊助もちょうど都合が付かなくて、お前等が学園長のおつかいで町に行くからついでに手伝って貰ったらいいと教えてくれたんだ。」


「流石、伊助。ぼく達の行動もちゃんと把握してるんだねぇ。」


しんべヱが妙に論点のズレた所で感心していた。




きり丸は不機嫌そうに、伊助の頼みでもあるならしょうがないっすねと渋々承諾した。




私としんべヱは、きり丸の素直じゃない行動に困ったように顔を見合わせて、苦笑いする。


土井先生ときり丸が私達の少し前を歩きながら、火薬運ぶんですからお駄賃ありますよね?出るか、馬鹿者っ!だなんてたわいもない会話をしている。




その様子を見ながら出来るだけ不自然じゃないように、前のふたりと間隔を空けて私達は歩く。




「…あんなに頑なでなくてもいいのにねぇ。」




しんべヱが小さく呟いた。


「ほんとに…伊助の苦労が忍ばれるよね…」


普段の伊助なら、多少の用があろうともきっちり委員会の仕事を優先しただろうにと思うと、先程のしんべヱの感心事項はある意味的を射ていたといえる。


「まあ、ふたりともあの性格だからねぇ…」


「私達はふたりが幸せなら…それが一番なのにね。」




目の前では、また口喧嘩が始まっていて‐‐‐正に何とかは犬も食わないって奴だ。



土井先生が生徒相手にあんなにムキになるのは、今やきり丸だけ。



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