御礼企画
□多分目立っていた筈です
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※現パロ。高校生きり丸と担任土井先生。
本文中に自転車の二人乗り表現がありますが、現在は違法行為ですよね(苦笑)現パロということで、すみませんがスルーでお願いします。
「…っ、くそぅ!パンクだぁ〜!!」
おれは年季の入ったチャリを前に中腰で座り込み、すっかり潰れてしまった前輪のタイヤに頭を抱えた。
今日はスーパーの特売日だから早く行きたいのに、タイミングが悪過ぎるっつーのっ!
おれは憮然としながら、周りを見回した。
校内の駐輪場ともなれば、矢鱈とチャリが溢れている。
が、流石に他人のチャリを勝手に拝借する訳にはいかない。
取り敢えず見知った顔を探して、あわよくば2ケツでスーパーまで連行して…帰りは歩いて帰ろうと頭の中で一番効率の良い方法を弾き出していた。
でも、そんな時に限って知ってる奴になんか会えやしない。
今日のおれはどんだけツイてないんだ…
ハアッと大きく息を吐いて、身体を起こすとおれはチャリを駐輪場に残したまま鞄を抱えて走り出した。
裏門を抜けて、スーパーへ向かって一直線にひた走る。
鞄に入っているペンケースやら弁当箱やらがガチャガチャと不協和音を奏でて、焦るおれを更に追い立てているような気がした。
近頃はすっかり暖かくなってきたせいか、着ていた冬用の学ランにうっとおしさを感じる。
信号で捕まった隙に学ランを乱暴に脱ぐと、鞄と一緒に小脇に抱え直す。
じんわりと汗ばんだ額をシャツの袖口でぐいと拭い去り、そのまま前髪をかき上げ、
信号が青に変わった途端、おれはダッシュした。
三つ目の角を曲がろうとした処で、見慣れた後ろ姿を見つける。
どうやら数人の女子に捕まっているらしく、チャリに跨がったまま土井先生達は楽しそうに雑談をしていた。
…おれは、正直面白くなかった。
おれが必死で走って、タイムサービスの醤油買いに行こうとしてんのにっ!
明らかに八つ当たりなのは判っていても、おれはそこまで人間出来てないし、
話し掛けたりしたら文句しか出て来ない気がして…おれは視線を先生から逸らして、その横をすり抜けた。
その途端に先生があっと、小さく声を上げた。
おれに気付いたんだろうけど、意地でも振り返ってなんかやらないんだ。
あーっっ、クソッ!
苛々する気持ちをそのままスピードに代えて加速する。
絶対間に合ってやるっ!
「‐‐‐る、…きり丸〜!」
後ろからムカつくほどのんびりとした声。
チリリンとベルを鳴らしながら、先生はおれにあっさり追い付いた。
「……っ」
「おい、何そんなに必死で走ってるんだよ?お前、自転車はどうしたんだ?」
おれは真っ直ぐ前を見たまま、息切れ混じりに言葉を紡ぐ。
「…チャリはパンクっ!急がなきゃ…タイムサービス間に合わないんすよっっ!!」
「ああっ!そういや醤油だったな。なんでもっと早く言わないんだっ!」
そう言うが早いか、先生はおれに手を伸ばし腕を掴むと後ろに乗れと首をしゃくった。
おれは息を切らしながら立ち止まり、先生にはじめて視線を向ける。
「早くっっ!」
「…了解っ!」
おれは自分の感情よりもタイムサービスを優先して、後ろの荷台に飛び乗った。
先生はおれにいくぞ、と一声掛けると一気に加速する。
加速と伴に風が起こり、おれの汗ばんだ髪や頬を吹き抜けては、身体の熱を冷ましてくれた。
おれは後ろ手を組むように荷台の後方を掴み、上体を起こして先生との距離を取って座る。
「なんでさっき、何も言わずに行こうとしたんだ?」
「…別に。」
おれは左右に揺れる先生の背中をぼんやりと見詰めながら、曖昧に答える。
「…別に何だ?」
「‐‐‐っ、だって…女子と楽しそうに話してるし、中に割って入ったら邪魔でしょ…?」
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