図書室―BL小説―
□この感情の正体は!?
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「ふぅー」
俺が向かった場所、それはヴォルフの部屋だ。
そして今俺はヴォルフの部屋の前に仁王立ちしている。
「あーどーしよ…素直になるって言ったけどさ、俺はヴォルフに何て言えばいいんだ!?」
「呼んだか?」
「うわっ!!」
当然聞こえた声と、同時に開くドアに俺は一歩後退り。
「何だ、やっぱりユーリか」
「あの、その…」
「まぁ入れ」
「お、お邪魔します!!」
俺にとって、ヴォルフの登場は予想外だった。
部屋に無事入れたものの、心臓は今にも出て来るんじゃないかって勢いで動いている。
「珍しいな」
「へ?」
「ユーリから僕の部屋に来るなんて」
「あのさ、ヴォルフ…」
「何だ?」
この先の言葉が言えない。
頭の中にはたくさんの文章が浮かんでいるのに、それが言葉として出てこない。
「俺は…」
「ユーリ?」
「俺はっ!!ヴォルフのことが好きなんだ!!ヴォルフと居ると楽しいってかドキドキするってか…あーもちろんそれは好きだからであって…」
「ユーリ」
「だから俺今までヴォルフに態度悪かったというか素直になれなくてだから…」
「ユーリ!!」
言葉になれば次々と出て来て、俺はヴォルフの2回目の呼びかけでやっと我に帰った。
「ヴォルフ…」
「ユーリ、僕は今までユーリのことを疑ったことはない」
「え…」
「僕だって、ユーリのことが好きだ」
「なっ///」
「ユーリは僕に一目惚れで、会ったその日に求婚しただろ」
「は、はい…」
ヴォルフは無意識なんだろうけど俺にしてみれば恥ずかしい言葉を顔色ひとつ変えないで言った。
ある意味うらやましい。
「ユーリはへなちょこだから気付くのが遅かったんだな」
「へなちょこ…」
「でも僕はそんなへなちょこユーリが大好きだ」
「ありがと///」
「まったく、へなちょこに付き合っている僕の身になれ!!」
言い返す言葉もありません。
ヴォルフが言う通り、俺はへなちょこ魔王だ。
でも、そんなへなちょこ魔王を支えてくれたのはいつもヴォルフだったんだ。
「ヴォルフ、これからも俺のことよろしくな?」
「当たり前だ、なにしろユーリはへなちょこ魔王だからな!!」
「そ、俺はへなちょこ!!」
「やけに素直だな」
「まーね!!」
今まで悩んだことが嘘のように俺は清々しい気持ちになった。
ヴォルフは機嫌よく窓の外を見ていた。
美少年は窓の外を見るだけで絵になるものだ。
俺はヴォルフの隣に駆け寄り、自分からヴォルフの手を掴んだ。
「ユーリ!?」
「な、ヴォルフ!!キャッチボールしようぜ!!」
「あぁ、あのぼーるを投げ合うやつか?」
「そう、行こう!!」
「ユーリが行こうと言うなら行ってやってもいいぞ」
「早く早く!!」
今度は俺がヴォルフの手を引っ張る番なんだ。
今まで引っ張られた分、これからは俺が引っ張っていくからな。
握ったヴォルフの手から伝わる体温はとても温かいものだった。
END
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