□バカと魔法と救出劇
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『誰か、魔王に攫われた姫を助けてくれるような勇者には、姫に嫁ぐ権利を与えてやろう』


そんな張り紙があった。


「姫のお婿さんになる……ってことは、こんな貧乏生活とはおさらばに…!」


俄然やる気になる僕、吉井明久ですこんにちは。

ここは某魔法王国。普通に国王とか魔王がいる。
ちなみに僕は極普通の極貧民。その日の食事にも苦労してます。


もし、姫を助けたら、
豪華な生活に……!


「というわけで、協力してくれたら褒美を山分けするよ」
「助け出すこと前提なのね」
「無理だったらどうするのじゃ?」
「何としてでも救い出す!」
「…………凄い気合い」

今僕が呼びかけているのは、近所の友人達。

剣士・島田美波
魔法使い・木下秀吉
僧侶・ムッツr……土屋康太

「…………今、言い直した?」
「とにかく、僕と一緒に姫を助けに行こう!」

と、こんなに言ってるのに、みんなはあまり乗り気じゃない。

「しかし、そんなことできるのかのう」
「…………言い直した」
「助けちゃったら、アキはお姫様と結婚することに……」
「ど、どーしたのみんな! ぼそぼそ独り言言いだして!」

くっ……このままじゃ、僕の『超リッチ☆人生計画』が台無しに……!

「みんな! 僕ら、友達でしょ! 僕の生活の為にも協力して!」
「……まぁ、アキにはお姉さんもいるのよね……」
「そうじゃの。明久の為だけではないしの」
「…………お姉さんの為なら」
「みっ、みんな!? 僕ら友達だよね!」


まぁ、とりあえずは出かけることになりました。

大丈夫かなぁ……




「そうですか。では、良い知らせを待っていますよ」
「うん。きっとお金持ちになって帰って来るよ」
「はい。手首を長くして待っています」
「……姉さん、わざと言ってない?」
「何の事ですか?」


そんなやりとりで見送られ、僕らは旅立った。

「しかし、魔王とはどんなものなのじゃ?」
「…………そう言えば、よく知らない」
「みんな馬鹿だなぁ」
「じゃあ、アキは知ってるの?」
「もちろん! 知ってるわけないじゃないか!」
「………………」
「……まぁ、最初から期待してなかったけどね」

でも、そうだな。敵のことは少しでも知ってた方がいい。


「どうした。何か困っているようだな」
「うわぁ!?」
「…………気配が無かった」

いきなり後ろから声をかけられた。
見ると、その筋骨隆々の姿と言い、筋肉と言い、肉といい……

「鉄じ……西村先生?」
「今、明らかに鉄人と言ったか」
「奇遇ですね。どうしたんですか?」

この人は僕らの学校の先生。

「学校の生徒が何人か姫の救出に出たからな。ここで見送りをしてたんだ」
「そうなんですか?」
「魔王だけじゃなく、ライバルとも戦わないといけないのね」
「ふむ、長い旅になりそうじゃの……」
「…………思ったより、大変」
「あ、先生、魔王ってどんなヤツなんですか?」

折角なので質問。

「魔王か? そうだな。基本的にめんどくさがりやだが、本気を出すと生来の頭の回転を駆使し、どんな手段を使ってでも事を成す。集団の統率力に優れ、卑怯な作戦を立てさせたら右に出るものはいない。昔は喧嘩三昧で「悪鬼羅刹」の名で今なお不良連中に恐れられている。(公式サイト及びウィキ参照)」
「す、すごいヤツね……」
「気のせいかな、知り合いにそういうヤツがいたような……」
「…………この話はあくまでパロディー」
「原作の人物・団体・人間関係とは一切関係ないのじゃ」

そんなヤツに捕まってるなんて。
早く姫を助けてあげないとね!

「じゃあ、行ってきます、鉄人!」
「西村先生と呼べ、馬鹿!!」
 
 
 
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