□秀吉と放課後
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すまんの、わざわざ放課後に呼び止めて。
 
少し、相談があっての…
 
いやなに、大したことではないのじゃが、
今度の舞台の事で…その。
 
 
ワシの役には恋人がおっての、そやつと仲良くやる場面があるのじゃ。
 
え?
まぁ…そりゃもう仲の良いカップルじゃ。手をつないで歩いたり……
 
ど、どうしたのじゃ!
落ち着け!
い、いや、ほんとに恋人なわけじゃないのじゃから…
 
大体、恋人同士でなくとも、手をつなぐことぐらいあるじゃろうに。
 
…え、無い? そうかのぉ…
 
ほら、こうやって…
 
……
 
な、なんじゃ。ワシの顔に何かついておるか?
お、おおぅ、もうこんな時間かの。夕焼けが真っ赤じゃ。周り全部が赤く見えるのじゃ。夕日のせいなのじゃ。
 
…あ、そう。相談じゃったな。
 
 



演じるからには、本気でそやつを好きになる事が……あ、あくまで役としてじゃぞ? 恋人の役をこなしたいと…!
 
そ、そうかの? そんなに真面目かの…?
うぅむ……
 
え、だ、だいすき!?
……あ、うむ。演劇は大好きじゃ……
だからこそ、完璧にこなしたいのじゃ。
 
 
でも、問題があっての……
 
…その、
 
コイビト、というのが、よくわからないのじゃ。
 
意味とかそういうものじゃなく、恋人同士の感覚、というか、
……なんというか、
 
ワシは誰かと付き合ったことなどないし、
物語で見たくらいで…

今までに?
まあ、そういう役は想像でやってきたのじゃが…
 
今度は大舞台になるそうでの。真剣なのじゃ。
 
 
…それでの、おぬしに…その、
協力して、ほしいんじゃ。
 
おぬしは、誰かと付き合ったことは、あるかの…?
 
いや、べつにどんな気持ちかとか、そういう説明が欲しいのではなく、自分で経験にないと身に入らないし…
 
 
…経験が、欲しいんじゃ。
 
誰かと付き合うという。
 
それも、
好きな人と付き合うという……
 
 
のぅ。
 
舞台までで構わん。
 
ワシに、
『惚れた相手と付き合う』ということを、教えてはくれんかの。
 
 
ワシを
 
おぬしの――
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